喫煙による全身への影響
喫煙による影響は、口腔内への影響だけでなく全身への影響にも大きく関与しています。
○たばこはがんのリスクを高める
たばこの煙には約200種類以上の有害物質が含まれており、そのうち約60種類に発がん性があるとされています。
たばこの煙の通り道の咽頭や肺だけでなく、有害物質が吸収される胃や腸など、これらの有害物質は全身の影響を与えます。有害物質が血液や尿に溶けて通る肝臓や腎臓、尿路などでもがんが発生するリスクが高まります。
たばこと最も関連が深いとされているがんは、肺がんや喉頭がん、口腔がんなど、直接たばこの煙に触れる部位です。しかし、たばこの有害物質は血液にのって全身に運ばれるため、胃がんや食道がん、肝臓がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がんなど、たばこの煙が直接触れない部位のがんでも発症するリスクは高まってしまいます。
がんは、3大死因のひとつで最も死亡率が高い病気で、長年日本人の死因第1位を占めています。
厚生労働省の「人口動態統計(確定数)」(2023年)によると、死因の1位は悪性新生物(がん)24.3%、2位は心疾患14.7%、3位は老衰12.1%、4位は脳血管疾患6.6%、5位は肺炎4.8%でした。
がんの原因の多くは、生活習慣が大きく関連されており食生活や飲酒、運動などの生活習慣がある中で、喫煙が最も危険因子とされています。喫煙は肺がんだけでなく、多くのがんのリスクを高めてしまうほかに、受動喫煙の方も肺がんなどの健康被害をもたらしてしまいます。
喫煙をしている男性は、非喫煙者に比べて肺がんによる死亡率が約4.5倍高くなっているほか、それ以外の多くのがんについても、喫煙による危険性が増大することが報告されています。
○循環器疾患
心筋梗塞や脳梗塞などの発症には、食事や運動など様々な生活習慣が関わっていますが、その中でも非常に重要な危険因子とされているのがたばこです。たばこには、血液中の悪玉コレステロールであるLDL-コレステロールを増やし、善玉コレステロールであるHDL-コレステロールを減らす作用や、血圧を上昇させる作用などがあります。
これらの相互作用により動脈硬化が進行し、狭心症や心筋梗塞などの心疾患、脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患などのリスクが高まるとされています。喫煙は、動脈硬化と関連した病気の原因となることが報告されています。
さらに、喫煙によって糖尿病が発症しやすくなるだけでなく、すでに糖尿病にかかっている人が喫煙し続けると、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病性腎症等の合併症リスクが高まることが分かっています。
喫煙者は、非喫煙者に比べて虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症等)の死亡の危険性が1.7倍高くなるという報告があります。また、脳卒中についても喫煙者は非喫煙者に比べて危険性が1.7倍高くなるという報告があります。
○呼吸器疾患
喫煙により空気の通り道である起動や肺自体へ影響を及ぼすことが知られています。
このため、喫煙は慢性気管支炎や呼吸困難、運動時の息切れなどの特徴的な肺気腫や喘息等の呼吸器疾患の原因と大きく関連しています。さらに、歯周病の原因とも関連があるという報告があります。
喫煙は、さまざまな呼吸器症状を引き起こし、喘息のリスクを高めます。
また、COPDの発生と、それによる死亡を引き起こす可能性があります。それだけでなく、肺機能の発達障害や呼吸機能の早期の低下にもつながります。
さらに、新型コロナウイルスに感染したとき、喫煙者は非喫煙者と比較して、重症となる可能性が高いことが報告されています。たばこの煙には多数の有害化学物質が含まれており、喫煙は全身の諸器官に悪影響をもたらします。
喫煙は呼吸器系の形態的・機能的変化をきたし、様々な症状や疾患を引き起こします。喫煙者は非喫煙者に比べて、咳・痰・喘鳴(ぜんめい:気道が狭くなっているため、呼吸時にゼーゼーという異常音が連続的に発生される状態)・息切れなどの症状が多くみられます。また、喫煙は気管支喘息のリスク因子とされています。特に、受動喫煙と小児の喘息には関連性があることが認められています。
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺気腫や慢性気管支炎などを併発する疾患で、別名「たばこ病」といわれているくらいたばこの煙が原因で起こることが多いです。
呼吸器の病気は感染によるものが多いですが、慢性閉塞性肺疾患は生活習慣と深い関わりのある病気です。たばこの煙や大気汚染、粉塵などが原因であり、慢性閉塞性肺疾患患者の90%以上が喫煙者といわれており、喫煙が最大の危険因子とされています。
喫煙者の発症リスクは、喫煙を始めた年齢、喫煙本数、喫煙年数など喫煙量に関係し、喫煙量が多い人ほど発症リスクが高くなります。また、喫煙者だけでなく受動喫煙も慢性閉塞性肺疾患の危険因子となっています。
慢性閉塞性肺疾患の発症リスクは、喫煙年数などに比例して高くなるので、早く禁煙すればするほど予防効果は大きくなります。すでに慢性閉塞性肺疾患を発症している方は、直ちに禁煙することで治療効果が上がり、進行を止めることができます。受動喫煙による被害が出ないためにも、直ちに喫煙者は禁煙することをおすすめします。
・新型コロナウイルス
新型コロナウイルスは、主に肺を攻撃する感染症です。
喫煙は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスク要因となります。喫煙者あるいは過去に喫煙していた人は、非喫煙者に比べて新型コロナウイルスに感染した場合の重症化リスクや死亡リスクが高まることがわかってきました。
WHOでは、高齢者や心血管疾患、がん、呼吸器疾患、糖尿病など基礎疾患(持病)のある人、肥満者などとともに、喫煙も新型コロナウイルス感染症の重症化要因であると述べています。禁煙をすることは、新型コロナウイルスの対策のひとつにもつながります。
○骨粗鬆症
たばこは、胃腸の働きを抑制し、食欲をなくして、カルシウムの吸収を妨げます。
女性ホルモン(エストロゲン)が骨の新陳代謝に関わっていますが、喫煙によって女性ホルモンの分泌を減少させてしまい、骨粗鬆症になる可能性が高まります。喫煙は、骨密度の低下を進めるため、骨粗鬆症や骨折にも大きく関係しています。
○脳や精神面などにも影響する
喫煙を続けている人は、禁煙をした人に比べて不安が強く、うつ病になるリスクが高くなり、またストレスも高いことが報告されています。研究では、中年から高年までの喫煙を続けている人は、喫煙しない人に比べて認知症になるリスクが高くなると報告されています。
○ニコチン依存症
喫煙がやめられない原因に「依存症」があります。依存性とは、あるものをやめようと思っても強い渇望があり、やめられなくなった状態をいいます。
たばこの成分であるニコチンによるニコチン依存は、国際疾病分類(ICD-10)や精神医学分野(DSM-IV)において独立した疾患として扱われており、たばこに依存性があることは確立した科学的知見となっています。
たばこを吸うと、たばこの3害に含まれるニコチンによって脳内でドーパミンという物質が大量に放出され、このドーパミンが快感を生じます。しかし30分もすると、逆にイライラしたり、落ち着かないなどの離脱症状(禁断症状)が現れてきます。
この離脱症状を解消するために、またたばこを吸うというその繰り返しが「ニコチン依存症」です。一度ニコチン依存症になってしまうと、たばこをやめるのが困難となり、ニコチン依存症から抜け出すのは危険薬物でもあるヘロインやコカインなどと同じくらい難しいといわれています。
・ニコチン
アルカロイドの一種で、神経毒性の強い猛毒です。化学物質としては猛毒に指定されています。
○妊娠中の喫煙による胎児・子どもへの影響
喫煙は母体への影響だけでなく、胎児の発育に対する悪影響が懸念されます。喫煙している妊婦さんから生まれた赤ちゃんは、喫煙していない妊婦さんから生まれた赤ちゃんに比べて低出生体重児となるリスクが約2倍高くなっています。
さらに、喫煙している妊婦さんは喫煙していない妊婦さんに比べて、早産・自然流産、周産期死亡(妊娠28週以降の死産と、生後1週間以内の早期新生児死亡)の危険性が高くなっています。
妊娠中の喫煙が胎児に及ぼす危険度は、厚生労働省の研究では、低出生体重児2.4倍、早産3.3倍という報告があります。
そのほかに、先天性口唇・口蓋裂は妊婦さんが喫煙をしていた場合、胎児は口唇・口蓋裂になりやすくなります。非喫煙者と比べた場合、約1.2倍口唇・口蓋裂になる確率が高くなります。
乳幼児突然死症候群(SIDS)は、元気な乳幼児が主に睡眠時に突然亡くなることであり、たばこやうつぶせ寝などが原因とされています。また、子宮外妊娠や妊娠中の異常(前置胎盤、胎盤早期剥離等)などの影響もあります。
受動喫煙の妊婦さんも胎児や子どもへの影響を及ぼすリスクは高いです。気管支喘息などの呼吸器疾患や中耳疾患、小児がん、注意欠陥多動性障害(ADHD:精神年齢に比べて、不適当な注意力障害、衝動性、多動性を示す行動障害)、歯周病、う蝕(虫歯)、歯肉のメラニン色素沈着などのリスクが高まります。
○まとめ
これらのことから、喫煙をすることにより虫歯や歯周病などの口腔疾患だけでなく、がんや循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患などの全身疾患にも大きく影響を及ぼしてしまいます。
また、喫煙を始めた年齢や喫煙本数、喫煙年数など喫煙量によって病気の発症リスクが高くなります。直ちに禁煙をすることで、予防することができ治療効果が上がります。そして、受動喫煙による被害が出ないためにも喫煙者は禁煙をしましょう。
しかし、喫煙者はニコチン依存によってなかなか禁煙ができない方は、自分1人で抱え込まず、医療機関などに相談してみましょう。
金属アレルギーでも歯列矯正はできる?
こんにちは。
神戸市垂水区にある矯正歯科専門医院のふじよし矯正歯科クリニックです。
いつも当院のコラムをご覧いただきありがとうございます。
今回は、「金属アレルギーを持っている方でも歯列矯正治療は出来るのか」というテーマについてお話していこうと思います。
当院に歯ならびのご相談に来られる患者様から、
「金属アレルギーですが、矯正治療をすることは可能でしょうか?」
「金属アレルギーでも出来る矯正装置はありますか?」
「歯ならびをきれいにしたいと思っているが、金属アレルギーがあるので不安で…」
という質問をされることがあります。金属アレルギーをお持ちだと、歯列矯正をすることは難しいのではないかという印象をされがちですが、現代は医療技術が発展し、金属を使用していない矯正装置もあります。そのため、金属アレルギーをお持ちの方でも安心して、歯列矯正治療を受けていただくことができます。
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1.金属アレルギーの原因となる物質について
金属アレルギーを引き起こしてしまう代表的な原因となる物質には、「ニッケル」「クロム」「コバルト」「パラジウム」「銀」「銅」「すず」が挙げられます。
ワイヤー矯正を行う場合、歯に装置(ブラケット)とワイヤーを使用して治療を行います。この装置(ブラケット)とワイヤーには、ニッケルやクロム、コバルトの金属が使用されています。特にニッケルは、装置(ブラケット)やワイヤーにもよく用いられているので注意が必要です。どの物質で金属アレルギーが起こるのかは個人差がありますので、金属アレルギーが疑われる場合は皮膚科でパッチテストを行うなどして、何の金属にアレルギー反応が起こるのかを把握しておくと良いでしょう。先天的に金属アレルギーでない場合でも、後天的に金属アレルギーの症状が現れる場合もあります。
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2.金属アレルギーの症状について
金属アレルギーは、「遅延型アレルギー」と呼ばれています。
このアレルギーは、遅延型なので24時間から72時間後に症状が現れることが多いです。具体的な症状としては、「口内炎」「かゆみ」「赤み」「唇の腫れ」「湿疹」などが挙げられます。まれにひどい場合だと、意識障害になる可能性があります。
金属アレルギーの症状には「接触性皮膚炎」「全身性接触皮膚炎」の2種類があります。
「接触性皮膚炎」は、金属が皮膚に触れている部分が赤くなったり、かゆみが出てきたりします。このような症状が起こるのは、汗などにより金属が溶けてしまい、イオン化することで起こります。
「全身性接触皮膚炎」は、むし歯治療で使われている被せ物や詰め物などのお口の中の金属類が、つばで溶けてイオン化し、体の中に入ることで全身に症状が出てしまいます。
多くの方は、「接触性皮膚炎」の症状のことが多く、「全身性接触皮膚炎」の方は少ないです。お口の中に銀歯などの金属が入っている場合、特に問題なく過ごせているのであれば、お口の中に金属が入っていてもアレルギー反応はないということになるので、歯列矯正治療も問題なく行うことができるでしょう。
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3.金属アレルギーの検査方法について
金属アレルギーの検査は大きく分けて2種類あります。
1つ目は、「パッチテスト」という検査方法です。
パッチテストとは、金属試薬を含んだパッチを2日間(48時間)背中や腕の表面皮膚の直接貼り付けます。そして、アレルギー反応が起こるかを調べます。
パッチテストでは数種類の金属を検索するので、歯科でよく使われている金属(ニッケル、クロム、コバルトなど)もアレルギー反応を起こすのか調べることができます。このパッチテストを行っている間、入浴や運動は行うことが出来ません。
2つ目は、「血液検査」です。
血液検査では、採血を行います。簡単に説明しますと、採取した血液に金属のイオンを加え、アレルギー反応が起こるかを調べます。
血液検査の場合、自分の身体にアレルギー反応が起こらずに済むというメリットがあります。
どちらも金属アレルギーの検査は、結果が出るまで時間がかかってしまうでしょう。そのため、金属アレルギーが疑われる方は早めに検査を受けることをおすすめします。
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4.金属アレルギーの方におすすめの矯正装置について
ワイヤー矯正の場合だと、セラミック製の装置(ブラケット)とチタン製のワイヤーを使用することでワイヤー矯正治療を行うことができます。
チタンは、金属の中でもアレルギーを引き起こしにくい素材になります。
ワイヤー矯正以外だとマウスピース型矯正があります。ですが、マウスピース型矯正は全ての歯ならびに適応しているわけではありません。
自分の歯ならびに適応しているかきになる方は一度、矯正歯科で検査を受けてみると良いでしょう。
マウスピース型矯正とワイヤー矯正では治療計画も異なるため、装置を選ぶ時は先生と相談を行うなどして、慎重に選択しましょう。
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5.まとめ
金属アレルギーの方でも安心して歯科矯正治療を受けていただくことができる矯正装置があるということをお分かりいただけましたか。
金属アレルギーの方で、歯科矯正治療を不安に感じている方は、一度矯正専門の歯科医院で相談してみるのも良いでしょう。
何の金属がアレルギーなのか分からないという方は、まず金属アレルギーの検査を行ってから矯正専門の歯科医院へ歯ならびのご相談に行かれるのもいいかと思います。
また、歯列矯正治療中に金属アレルギーの症状を発症した場合は、なるべく早めに担当の歯科医師に相談しましょう。
電動歯ブラシの特徴とメリットデメリット
こんにちは。神戸市垂水区にある歯医者の「ふじよし矯正歯科クリニック」です。
今回は、普通の歯ブラシと電動歯ブラシの違いや、メリットやデメリットについてお話していきます。
皆さんは、毎日の歯磨きでは、どっちの歯ブラシをお使いですか?最近は、色んなメーカーから電動の歯ブラシが出ています。毛先が回転するものや、先端を目的別に交換できるようなタイプなど、家電量販店にもたくさん並んでいます。最近では、子供用の小さめの電動歯ブラシもあります。電動では無い普通の歯ブラシにも色んな種類があります。「やわらかめ・ふつう・かため」や「歯槽膿漏用」などありますね。普通の歯ブラシと電動の歯ブラシ、どっちがいいのか?どう違うのか?と思われたことはないでしょうか。ご自身の好みもあると思いますが、基本的には、磨きやすいほうを使っていただければいいと思います。ただ、怪我や病気などで利き手が不自由な場合は、電動歯ブラシのほうが使いやすいかもしれません。どちらにも使い方やメリットデメリットがありますので、お話していきます。
電動歯ブラシの特徴
電動の歯ブラシとは、ブラシ(毛先)の部分が高速に回転や振動し、歯垢を除去する歯ブラシです。替えのブラシの種類が多いものもあり、着色を除去できたりするものや舌を磨けるブラシもあります。最新の機種では、ブラシの回転をレベルで調整できたりもしますし、専用のアプリと連動してスマートフォンで磨き残しを確認でき、センサーがついていて、電動歯ブラシ特有の毛先を歯に強く押し付けてしまうのを防ぐ機能や、ブラシの交換時期まで本体が教えてくれるようです。電動歯ブラシについて調べてみると、すごく進化していてびっくりしました。怖くてお値段は見ていないですが…。
電動歯ブラシの種類
電動の歯ブラシには種類があり、ブラシ部分が「回転式」と「振動式」と「音波式」と「超音波式」とあります。それぞれの特徴を説明します。
・回転式
回転式のブラシには独特の特徴があり、ブラシの部分が丸くなっています。丸い形をしたブラシが高速回転をして歯を磨くため歯垢をとることに優れています。
・振動式
振動式は、ブラシの部分が細かく振動して歯を磨く電動の歯ブラシです。回転式よりもブラシの動きが激しくないため優しい力で歯磨きができます。
・音波式
音波式は、音波振動でブラシを振動させています。ブラシ部分に音波の振動が発生します。およそ1分間に3万~5万回ヘッドの部分が振動します。その音波振動で発生する水流と細かい泡で歯を磨きます。
・超音波式
超音波式は、音波式よりも早い速度でブラシ部分の音波が振動します。およそ1分間に100万~150万回ヘッドの部分が振動します。超音波の効果では、歯から歯垢(プラーク)除去をする効果があります。
電動歯ブラシのメリットとデメリットについて
電動歯ブラシは、ヘッドのブラシの部分が回転や振動する動きをするので、普通のハブラシと違い、短い時間の歯磨きで歯垢(プラーク)を除去できます。正しくお使いいただければ口腔内の清掃にはとても優れているのが電動歯ブラシです。ただ、電動ならではのメリットやデメリットもあります。
電動歯ブラシのメリット
- 歯垢(プラーク)の除去率が良い
電動歯ブラシは、ヘッドのブラシ部分が高速で回転・振動や音波を発生させるため、普通の歯ブラシで歯を磨くよりも、歯を一本一本丁寧に磨けるため歯垢(プラーク)の除去率が良いです。また、普通のハブラシでは届かない歯周ポケットの中まで回転や振動でブラシの毛先が届くので、歯周病の予防にも効果があります。
- 短時間で効率的に磨ける
毎日の歯磨きにどれ位の時間をかけていますか?一般的に多いのは2分~3分ぐらいのようです。電動歯ブラシだと電源を入れて切れるまで歯を磨く習慣がつきます。メーカーにもよりますが、30秒ごとに持ち手部分が振動または音でお知らせしてくれ、上下と左右の歯、それぞれ30秒の計2分が電動歯ブラシの歯磨きの時間になります。スマホを見ながらダラダラ磨きにならずに短時間で効果的に歯を磨くことができます。
- ブラッシングの技術がいらない
電動歯ブラシは、電源をいれるだけでヘッドのブラシの部分が回転や振動をし、歯に軽く押し当てるだけで歯磨きができます。普通の歯ブラシでのブラッシングだと、奥歯や下の前歯の裏側など、歯ブラシの向きを変える必要がありますが、電動歯ブラシだと、歯に沿ってゆっくり移動させるだけで歯磨きができます。
電動歯ブラシのデメリット
- 価格が高い
普通の歯ブラシだと1本数百円ぐらいで、コンビニでも買うことができますが、電動ハブラシは、数千円~数万円など高価なものになります。また、定期的に交換をする替えのブラシも普通の歯ブラシよりも値段が高いうえ、何種類か替えブラシがあるものもあります。歯ブラシは消耗品なため、ある程度の値段(コスト)がかかってしまいます。また、電化製品になりますので、故障することもあります。すぐに買いに行けないとこもデメリットになるかもしれません。
- 充電や電池が必要
メーカーによって異なりますが、乾電池で使用するものや、充電式ですとコードがついておりコンセントから充電する必要があります。私も一時期、電動歯ブラシを使用していましたが、このコードが洗面所ですごく邪魔で、浮かす収納が出来なかったので電動歯ブラシを使うのを止めてしまった経緯があります…。
- 歯や歯茎を傷めてしまう
電動歯ブラシを使用する際の一番のデメリットになってしまうのが、使い方や磨き方を間違えたまま(力を入れて磨いてしまう)で毎日使用してしまうことで、歯の摩耗・歯肉退縮・歯のエナメル質が傷つくことによって知覚過敏などがなることがあるので、電動歯ブラシを使う際は、普通の歯ブラシと同じような感覚で磨かないような注意が必要です。
電動歯ブラシを使用する際の注意点
電動歯ブラシを使用する際は、研磨剤の入っていない歯磨き粉をお使いください。研磨剤が入っていると、電動で高速回転や振動し歯を磨く電動歯ブラシだと歯が摩擦などで歯の表面が傷ついてしまいます。また、普通の歯磨き粉に多くふくまれている発泡剤(泡立つ機能)が入っていないものをお選びください。発泡剤が含まれていると普通の歯ブラシで磨くときよりも電動歯ブラシだとお口の中が泡だらけになってしまうため、磨き残しが多くなってしまいます。電動歯ブラシの場合は、ジェル状になっていて泡だちのない歯磨き粉がおすすめです。また、発泡剤が含まれていない最初から泡ででてくる歯磨き粉もおすすめです。電動歯ブラシでも普通の歯ブラシでも、共通しているのは、「歯と歯の間(歯間)は磨けない」です。必ず歯間ブラシやフロスを一緒に使うようにしてください。
まとめ
今回は、電動歯ブラシについてお話させていただきました。電動歯ブラシは家電量販店などで販売されており、各メーカーから色々なタイプが発売されています。ゆえに、選び方が大変難しいので、購入をお考えの方は、購入されるまえにかかりつけの歯科医院でご相談されてからのほうが良いと思います。年齢やお口の中の状態によっては、逆効果になってしまうタイプの電動ハブラシもあります。また、お子様などは正しい歯の磨き方を知らないままで電動歯ブラシに慣れてしまうと、磨き残しの影響で虫歯のリスクが高くなってしまうので注意が必要です。大人も子供も、ご自身にあった歯ブラシや電動歯ブラシをお選びいただくと、お口の中の環境が良くなります。
喫煙による矯正治療の影響
○ 歯の動きが遅くなる
矯正治療は、骨の吸収と形成が行われる骨代謝によって歯が動きます。骨代謝が行われる際には、骨を吸収する破骨細胞と新しい骨をつくる骨芽細胞が出現します。歯に矯正力が加わると、歯根膜に圧迫側と牽引側が生じます。圧迫側では骨吸収、牽引側では骨形成が生じて歯の移動が起こります。
しかし、たばこに含まれるニコチンなどの影響で血流や代謝が悪くなることで、破骨細胞(はこつさいぼう)や骨芽細胞(こつがさいぼう)が減少し、骨吸収や骨形成に遅れが生じてしまいます。それによって、歯の移動がスムーズに行われず、矯正治療の期間が長くなる原因にもつながります。
○ 口臭
たばこの煙の中の成分にニコチンとタールが含まれており、口腔内や舌を乾燥させ、唾液分泌量が低下することで細菌が繁殖しやすくなります。また、矯正治療中はブラケットやワイヤーなどの装置が歯に装着されているため、プラーク(歯垢)や歯石、食べかすが溜まりやすい状態になります。それにより強い口臭が発生するリスクが高くなります。
○ 歯周病のリスクが高まる
たばこはニコチンの血管収縮作用があるため、歯周病の特徴でもある歯肉の腫れや出血などの症状が出にくく、発見に遅れることがあります。この状態が続くと歯周病が進行し、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けだし、歯が動揺し、歯を失うリスクが高まります。矯正は歯の周囲に炎症を起こすため、すでに歯周病となっている場合、さらに歯周組織の炎症範囲が広がり、歯周病をより進行する可能性があります。歯周病になると歯並びが悪くなることもあります。
○ 歯や矯正装置に着色がついてしまう
たばこを吸うと、たばこの煙に含まれるタール(ヤニ)という発がん性物質が歯に着色するため、歯の表面全体に着色がつきます。特に歯の裏側は黒ずみやすいです。そして、矯正装置にも着色がついてしまいます。喫煙による着色は、歯ブラシではなかなか落とすことができないので、歯科医院でのクリーニングが必要になります。しかし、矯正装置の着色はクリーニングをしても簡単に取り除くことが難しくなってきます。ワイヤー矯正ではブラケットが歯に直接つけているので、1回1回クリーニングのために外すことはできません。目立ちにくい白ワイヤーやクリアブラケットなども変色し
やすくなり、見た目が気になりやすくなってしまいます。また、ワイヤー矯正の方はワイヤーやブラケットという装置がついているため、歯磨きがとても磨きにくく、ブラケット周りにプラーク(歯垢)や歯石が溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まってしまいます。
マウスピース矯正でもマウスピース自体にヤニがつき変色することがあります。マウスピース矯正は目立たない、装置を外せることができることがメリットです。しかし、新しいマウスピースに交換するまでは、たばこで黄ばんだマウスピースを使用し続けないといけないため、マウスピースが黄ばんで目立ちやすくなって審美的にも悪くなってしまいます。カレーやコーヒー、紅茶などでも着色はつきますが、たばこが1番とれにくく残りやすいです。クリーニングで着色を除去してもらっても、また着色がつくのでその繰り返しになってしまいます。
○ アンカースクリューが脱離しやすくなる
アンカースクリューとは、小さなチタン製のネジを歯肉の上から歯槽骨や顎の骨に植立し、それを固定源として使用し歯を動かしていきます。このアンカースクリューは外科処置に分類され、「矯正用インプラント」とも呼ばれています。そのため、処置後に喫煙をすると、歯周組織の再生が妨げられて、固定されず不安定な状態になりやすくなり、アンカースクリューが脱離する可能性が高くなります。
また局所の血行不良による影響で、アンカースクリューが脱落してしまう可能性があります。歯を支える骨の代謝を悪くするため、アンカースクリューが脱落してしまうトラブルが起こりやすくなります。
○ 抜歯後の合併のリスク
矯正治療で行われる外科手術の1つに抜歯があります。これは歯を並べるスペースを確保するために行われる処置です。抜歯直後は血行の流れが良くなっており、歯が動きやすい状態になっています。しかし喫煙者の場合、たばこは傷の治癒能力を遅らせるため、抜歯後の回復を妨げる可能性があります。また抜歯後に喫煙を続けると、「ドライソケット」と呼ばれる症状を引き起こすリスクもあります。
・ ドライソケット
ドライソケットとは、歯を抜いた傷跡が血餅(けっぺい)で塞がれず、骨が露出した状態のことをいいます。抜歯窩治癒不全(ばっしかちゆふぜん)ともいわれています。通常、抜歯直後はかさぶたのような血餅が形成されて自然治癒します。しかし、喫煙によって血餅の形成が妨げられ骨が露出したままになると、骨面は乾燥し感染しやすくなります。冷水による刺激痛や食物による接触痛、強度の持続性疼痛などの強い痛みを伴うことがあり、症状が進行すると首のリンパ節や顎骨の骨膜まで細菌感染が広がる可能性もあります。そして、ニコチンの作用で毛細血管が収縮してしまうと、抜歯後に処方される痛み止めや化膿止めなどの薬の効果が出にくくなる可能性があり、体の細部まで薬がいきわたりにくくなります。痛みが続く場合は、かかりつけの歯科医院へ受診してください。
(ドライソケットになる原因)
歯を抜いた場所は、血餅によって覆われます。血餅は血液がゼリー状に固まったもので、かさぶたと同じ役割があります。血餅が抜歯した場所に塞がれば、ドライソケットにはなりません。しかし、何らかの原因で血餅が形成されなかったり、外れてしまったりすることがあります。
◦血餅が形成されなくなる原因
・ 抜歯後の飲酒や入浴
・ 抜歯後の激しい運動
・ 経口避妊薬の服用
・ 血液凝固阻害薬(抗凝固薬、抗血小板薬)の服用
・ 抜歯前後の喫煙
◦血餅が外れる原因
・ 強いうがいや過度なうがい
・ 傷口を指や舌で触る
・ 歯ブラシで傷口を刺激する
このように喫煙は、矯正治療を行うにあたってメリットはひとつもありません。矯正治療中でも喫煙を続けると、治療計画通りに進みにくくなり、治療期間が延びる原因にもつながる可能性があります。また、口腔内だけでなく、全身への影響も大きく関与しており、生活の質(QOL)を向上させるためにも禁煙はとても重要です。
副鼻腔炎と歯痛について
副鼻腔炎(蓄膿症)にかかったことがある方で、「歯が痛い」という経験をしたことがあるという方がおられるかと思います。
または、副鼻腔炎にかかると『歯が痛くなった』という話を耳にしたことはありませんか。
実は、副鼻腔炎を発症した7割の患者さんが歯の痛みを感じたという報告があります。このようなことから、副鼻腔炎(蓄膿症)が原因で歯が痛くなることは、よくある症状だといえます。
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副鼻腔炎(蓄膿症)による歯の痛みについて
・ 原因
副鼻腔炎には、上顎洞といわれる空洞があります。この上顎洞には、歯の神経が近くに通っていたり、歯が近くにあります。
そのため、副鼻腔炎(蓄膿症)の炎症が歯の神経や奥歯の根元の辺りに影響を及ぼす可能性が高く、歯の神経や歯に炎症が伝わるとむし歯では無いのに、歯に痛みを感じることがあります。
副鼻腔炎(蓄膿症)の症状が見られる患者さんの7割の方が歯の痛みを訴えたという報告も出ています。
つまり、これらのことから、副鼻腔炎で歯が痛くなることは珍しいことではないということが分かります。
・ 特徴
副鼻腔炎(蓄膿症)が原因となり、歯が痛くなるという症状には6つの特徴があります。
① 上の奥歯が痛くなる
上の奥歯の根元はとても副鼻腔炎に近い位置にあります。個人差はありますが、人によっては副鼻腔(上顎洞)の中に奥歯の根元が入り込んでいる場合もあります。それくらい近い位置にあります。そのため、副鼻腔炎による炎症が歯の根元から歯に伝わって、上の奥歯が痛くなるということが起こります。
② 複数の歯が痛くなる
むし歯の場合、一般的にはむし歯になった歯のみに痛みを感じます。
しかし、副鼻腔炎(蓄膿症)の場合は副鼻腔の近くにある歯の根元辺りの炎症がある範囲に痛みを感じます。炎症の範囲が広ければ広いほど、複数の歯に痛みが生じます。複数の歯が痛くなるという症状は珍しいというわけではありません。
③ 何もしていなくても歯が痛くなる
副鼻腔炎(蓄膿症)の炎症がひどくなってくると、食事の際に食べ物を噛んでいる時や歯を喰いしばっている時以外にも歯に痛みを感じます。
副鼻腔炎の炎症が大きければ大きい程、何もしていない時も強い痛みを感じる傾向があります。
④ 下を向くと痛みを感じる
下を向いた時、副鼻腔炎の中に溜まっている膿の場所が変わるので、副鼻腔内の圧力に変化が生じます。
一般的には下を向くことで、頭・歯・顔の神経が圧迫される傾向があるため、そのような影響で歯が痛むということになります。
⑤ 左右のどちらかの歯が痛くなる
一般的な副鼻腔炎(蓄膿症)の症状は、左右両方の副鼻腔に起こりますが、歯に痛みが出るのは片方だけ痛むことが多いと言われています。
急性副鼻腔炎(蓄膿症)の方は特に、片方の歯だけが痛むという症状が多いようです。症状には個人差がありますので、まれに両方の歯が痛むこともあります。
⑥ 痛くなる歯と痛くならない歯がある
一度治療をしたことがある歯と比べると、治療をしたことがない歯の方が痛みを感じる可能性が高くなります。歯の神経を抜いく治療(抜髄ばつずい)をしたことがある歯は、ほとんど痛みを感じない可能性があります。
そのため、副鼻腔炎(蓄膿症)になっても痛みを感じる歯と痛みを感じない歯があります。
・ 痛みがいつまで続くのか
副鼻腔炎(蓄膿症)で歯が痛くなった時は、副鼻腔炎(蓄膿症)の症状が治るまで痛みが続きます。あるいは、歯や歯の周囲の炎症が治るまでと言われています。早めに適切な治療を行わなければ、複数の歯の周囲の神経に炎症が広がってしまい、複数の歯が痛くなったりする可能性があります。
副鼻腔炎(蓄膿症)が慢性化してしまうと、繰り返して歯が痛くなってしまう場合があります。
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副鼻腔炎で歯が痛いときの対処法
・ 速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう
歯に痛みを感じるほど副鼻腔炎(蓄膿症)の炎症がひどくなってきた場合は、なるべく早めに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
早めに治療や診断を行うことで、副鼻腔炎(蓄膿症)の炎症を抑え、歯の痛みを軽減することが可能になります。副鼻腔炎(蓄膿症)で歯が痛いときは、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
・ 保冷剤などで冷やす
もし、すぐに耳鼻咽喉科に行くことができないという方は、少しでも症状を軽減するために「冷やす」ということをおすすめします。
頬のあたりを冷やすことで、副鼻腔炎の症状を一時的に和らげる効果が期待できます。試しに行ってみてはいかがでしょうか。長時間冷やしたままだと、凍傷になってしまう恐れがあるので気をつけてください。
ですが、この方法はあくまで耳鼻咽喉科をすぐに受診することが難しいという方への対処法であり、副鼻腔炎(蓄膿症)の症状が治るわけではありません。なので、早めに耳鼻咽喉科で治療を受けましょう。
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まとめ
副鼻腔炎(蓄膿症)と歯の痛みについての関係をお分かりいただけましたか。
もし、副鼻腔炎(蓄膿症)が発症したという方はなるべく早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
喫煙と歯周病
たばこの煙には約4000種類の化学物質が含まれており、その中のニコチンや一酸化炭素などの有害物質が約200種類あり、発がん性物質が約70種類といわれています。
喫煙が習慣化すると、歯周病の発症しやすくなり、歯周病の進行を重症化させてしまいます。
また、口腔がんや歯周病(歯槽膿漏)などの口腔疾患だけでなく、呼吸器疾患や循環器疾患、消化器疾患などの全身疾患にも影響を及ぼします。
○ たばこの三害
たばこの主な成分は、ニコチン・タール・一酸化炭素です。
・ ニコチン
アルカロイドの一種で、神経毒性の強い猛毒であり、化学物質としては毒物に指定されています。
ニコチンは血管収縮作用があり、その影響で歯周組織の血流が悪化し、十分な栄養や酸素を供給することが困難になります。また、唾液の分泌量が減少し、細菌が増殖しやすくなり虫歯になりやすくなります。そして、ニコチンには依存性があります。たばこを吸い続けると、ニコチンを吸収しないとイライラする、落ち着かない、不安になるなどの症状が出やすくなります。(ニコチン依存症)
・ タール(たばこのヤニ)
たばこの煙のうち、一酸化炭素やガス状成分をのぞいた粒子状の成分のことです。タールは発がん性物質で、独特な臭いをもっています。
・ 一酸化炭素(CO)
一酸化炭素は酸素に比べて200倍以上もヘモグロビンに結び付きやすい性質をもっており、一酸化炭素とヘモグロビンが結合することで、血液の酸素運搬能力が低下し、末端組織が慢性的な酸欠状態に陥ります。これが一酸化炭素中毒といいます。一酸化炭素はたばこの煙の中に1~3%ほど含まれています。
○ たばこから口腔への影響
・ 血管収縮作用
口の中にたばこの成分や煙が入ると、粘膜や歯肉から吸収されます。吸収されたたばこの有害物質は、微小血管が収縮し、歯肉の血流量を減少させ、血行が悪くなることで、歯肉の炎症が起こっていても出血や腫れに気づきにくくなります。そのため、歯周病の発見が遅くなってしまいます。
・ 歯槽骨吸収、歯の喪失
血液循環が悪化して歯肉に十分な栄養や酸素がいきわたらなくなると、歯周ポケットの中で歯周病の原因となる細菌が繁殖しやすくなります。その細菌が産生する毒素が歯周ポケットを深くさせ、歯を支える骨(歯槽骨)を溶かします。歯を支える骨が溶けると、歯肉が下がり、歯がグラグラと動揺し、やがて歯を失ってしまいます。
・ 創傷治癒能力の低下
喫煙者は非喫煙者と比べて、歯周病の治療は治りにくく、歯周外科治療後などの創傷治癒能力が劣ることも報告されています。ニコチンは体を守る免疫機能を抑制するため、歯周病だけでなくさまざまな病気に対する抵抗力が落ちることで、アレルギーが出やすくなります。傷を治すための細胞(線維芽細胞)の働きまでも抑えてしまいます。そのため、手術後の治りが遅くなります。そして、歯周組織の修復機能も低下するため、治療をしても治りにくいです。
・ 味覚障害
味を感じる味細胞は常に生まれ変わりが必要であり、その際使われているが亜鉛です。たばこを吸うと体内に活性酸素が作られ、それを体外に出すのに多く亜鉛が使われます。そのため、亜鉛が欠乏し、味覚障害が起こります。たばこを吸うと味蕾がニコチンやタールで刺激され、麻痺して「苦み」が先に鈍くなり、「苦み」「酸味」「塩味」の順に影響を受け、濃い味つけを好みやすくなります。味覚予防の方法としては、第一に禁煙することであり、食事等では亜鉛を多く含む食品を摂取しましょう。
(例:レバー、チーズ、海藻、うなぎ、ナッツ類等)
また、たばこに含まれるタールは舌を乾燥させ、舌の上に残りやすいため、舌が黒ずんでくることで味覚障害が起こりやすくなります。
・ 口臭
たばこの独特な臭いは、タールによるものです。タールは粘性が高く、時間が経っても口の中にとどまります。また、たばこを吸うと唾液分泌量が低下し、口の中が乾燥するため、口臭が悪化します。また、たばこは口臭の原因となる歯周病を重症化させるため、より口臭が悪化します。
・ 虫歯
喫煙をするとニコチンの血流阻害作用により、唾液の分泌が悪くなり、唾液緩衝能力が低下することで、プラーク(歯垢)が沈着しやすくなり、虫歯菌の活性が増大して歯質の脱灰が増加することにより、虫歯になりやすくなります。また、叢生で磨きにくい場所は特にプラーク(歯垢)が溜まりやすいため、虫歯ができやすくなります。そして、喫煙によって歯肉が下がることから歯頚部(歯と歯肉の境目の部分)に虫歯が起こりやすくなります。
・ インプラント
喫煙の血流阻害作用や血管収縮作用などが原因で、歯肉や骨に十分な栄養や酸素がいきわたらなくなります。その結果、歯周組織が弱まり、インプラントと骨が結合しにくくなることで、インプラントの維持が不安定になります。
・ 口腔がん
たばこに含まれる発がん性物質や喫煙によって生じる活性酸素は、がんを抑制する遺伝子を傷つけるため、がんを引き起こすことがあります。喫煙によって分泌されるアドレナリンの影響で抗体の働きが弱体化することにより、がんの成長を助長してしまいます。また喫煙すると、がんの前身である白板症になる可能性が高くなり、口腔がんのリスクがさらに高くなります。白板症が悪性になる確率は白板症全体の5%ほどですが、喫煙を続けるとがん化するリスクが増えてしまいます。
白板症:口腔粘膜、とくに頬粘膜や舌、ときには歯肉にみられる白い病変で、こすっても剥離しないものをいいます。白板症は比較的頻度も高く、とくに舌にできたものは悪性化する可能性が高いため、前がん病変(口腔潜在的悪性疾患ともいいます。)の代表的なものとされています。びらん(ただれ)を伴うこともあり、ものが当たると痛かったり(接触痛)、食べ物がしみたりすることがあります。原因は、喫煙やアルコール、刺激性の強い食べ物(辛い物や熱いものなど)を過剰に摂取することなどによる化学的刺激、悪い歯並びや口腔粘膜を継続的に噛んだり、傷つけたり、義歯などによる慢性の機械的刺激、さらに加齢や体質なども関係するといわれています。
・ 義歯(入れ歯)
喫煙の影響で歯肉が弱まり、義歯をつくった時と比較すると口腔内の状態が変化するため、義歯が入らなくなります。また、喫煙により唾液の分泌量が減少し、口腔内が乾燥することで義歯がフィットしにくくなります。さらに喫煙を続けると、白板症になる可能性があります。
・ 着色
ニコチンやタールが歯に着色(茶褐色・黒色)し、さらに汚れが沈着することで歯の裏側は特に黒ずみます。タールが歯に沈着することで、歯の修復物のレジンの辺縁などに着色しやすく、見た目も悪くなってしまいます。たばこは喫煙者(能動喫煙)だけでなく非喫煙者(受動喫煙)にも影響を及ぼします。歯肉が黒ずんでくること(歯肉メラニン色素沈着)は、たばこ関連の歯周炎の特徴であり、非喫煙者の約5.5倍もその子どもの歯肉には色素沈着がみられます。
◦ 歯肉のメラニン色素沈着
歯肉のメラニン色素沈着が認められた場合、必ずしも受動喫煙が原因であるとは限りません。
歯肉メラニン色素沈着に影響する可能性がある因子はさまざまあります。
- 口呼吸
口呼吸は歯肉粘膜を乾燥させ、粘膜の抵抗性を減少させるため歯肉炎を発症しやすくなります。
口呼吸による歯肉の乾燥がメラニンの生成を活性化させる刺激になっている可能性があります。
- 日焼け(紫外線)
メラニン色素の生成は紫外線に対する防御であり、メラニンの酸化反応によりメラニン色素沈着が濃くなります。日焼けをしている人の方が歯肉のメラニン色素沈着も濃く、範囲が広い傾向があります。
また、直接的に日光が歯肉に当たって濃くなるのではなく、目や全身へ当たることによってメラニン色素の生成が活性化されている可能性があります。
- 髪の毛の色
頭髪の色が黒に近い方は頭髪が明るい方に比べて、歯肉のメラニン色素沈着も濃く広い範囲に
みられます。
- ビタミンC不足
メラニン色素の生成はアスコルビン酸により抑制されます。そのため、ビタミンCを不足している方は
メラニン色素の生成を促進している可能性があります。
これらの要因などでお身内に喫煙者がいない場合でも、歯肉のメラニン色素沈着が濃くなる可能性があります。また、喫煙者はメラニン色素沈着が濃くなるのはもちろん、受動喫煙者は喫煙者と同居年数が長いほどメラニン色素沈着は濃く広い範囲にみられます。そして、同居している喫煙者の喫煙場所によっても特に子どもは影響の差があります。年齢が高い方がメラニン色素は濃くなりやすいです。
○ 禁煙の効果
喫煙は歯周病の予防や治療を妨げる原因であり、喫煙者の歯周治療には禁煙が必要です。禁煙をすることによって、歯周組織は数週間で本来備わっていた免疫応答が回復するようになり、少しずつ歯肉の状態や歯肉の色も健康な色に回復していきます。そして、免疫や細胞のはたらきが高まるため、歯周病のリスクが低下し治療効果が上がります。また、口の中がさわやかになり口臭がなくなることで味覚も回復し、おいしい食事ができるようになります。口腔内だけでなく色々な病気のリスクが減少し、全身の健康にも大きく関わり、生活の質(QOL)の向上をさせるためにも禁煙はとても重要なことです。歯の喪失のリスクに関しては非喫煙者に比較して、喫煙者は高いリスクをもっていますが、禁煙によりそのリスクが徐々に低下していきます。さらに禁煙をすることで、同居している家族や職場、友人など、道ですれ違う不特定多数の人々の受動喫煙をなくすことができます。
正しく選べていますか?歯ブラシと歯磨き粉の選び方
こんにちは。神戸市垂水区にある歯医者の「ふじよし矯正歯科クリニック」です。
今回は、歯ブラシと歯磨き粉の選び方についてお話していきます。
皆さんは、普段歯ブラシを買い替えるときに、どう選んでいますか?好みのものがあってずっと同じメーカーの歯ブラシを買っている方や、とくにこだわりがなく、値段のお安いのを買っている方など様々かもしれません。できれば、毎日使う歯ブラシは、自分のお口の中の状態にあった物を選ぶほうがいいです。「ん?お口の中の状態?」と思うかもしれませんが、年齢や性別によっても違いますし、健康な歯や歯茎の方・歯列矯正治療中の方・虫歯の有無や歯垢のつきやすい方・歯周病軽度な方・歯周病重度の方など、お口の中の状態は皆それぞれ違いがあります。自分にあった正しい歯ブラシと歯磨き粉を選ぶときに参考になればと思います。今回は、普通の歯ブラシについて書きますが、電動の歯ブラシをお使いの方も多いと思いますので、電動歯ブラシについては、次回お話していきます。
歯ブラシの種類と症状別の選び方
ドラッグストアに行けばたくさんの歯ブラシが並んでいると思います。見た目やお値段で選ばれている方もいれませんが、ご自身のお口の中の症状と歯ブラシが合っていないことも多く、しっかり時間をかけて歯を磨いているつもりでも、きちんと磨けていないことがあります。きちんと磨けていないことを「磨き残し」といいます。磨き残しがあると歯垢がとれず、時間がたってしまうと歯石になり、虫歯や歯周病になるリスクが高くなります。また、歯茎の状態が悪いまま、硬めの歯ブラシを使っていると、歯肉が傷つき歯肉退縮(歯茎下がり)になってしまうこともあります。ご自身のお口の中の症状も見て選んでみてください。
① ブラシ部分の硬さ
歯ブラシの毛先の硬さには、「やわらかめ・ふつう・かため」と3種類あり、歯ブラシのパッケージにも記載されています。好みもあるかもしれませんが、歯磨き(歯の汚れを落とす)に適しているのは、「ふつう」の硬さです。
② ヘッド部分の大きさ
歯ブラシのヘッドとは毛先がついている歯を磨く部分の大きさです。大きいもの、小さいもの、厚みがあるもの、薄いものなど多種多様にあります。先が細くなっているものや、コンパクトサイズのものなど各メーカーから発売されております。
③ ヘッド部分の形
歯ブラシを横から見たときに、毛先が「真っ平のフラットタイプ」と「デコボコまたはギザヒザしている山型タイプ」「真ん中の毛先だけ少し低いU字型」などがあります。
④ 歯ブラシの毛先の違い
歯ブラシの毛先には2種類あるのをご存じでしょうか?毛先の先が丸くなっている「ラウンドカット」と、毛先の先にむかって毛が細くなっている「超極細毛」の2種類があります。
お口の中の症状別 歯ブラシの選び方
① 歯列矯正治療中の方
歯並びを整える歯列矯正治療中の方は、お口の中に装置が入りますので歯磨きがしにくくなにます。ふつうの硬さでヘッドが小さめの歯ブラシがおすすめです。装置やワイヤーの周りは、歯ブラシを小刻みに動かしながら磨いてください。また、普通の歯ブラシだけではなく、先が尖っているワンタフトブラシや歯間ブラシ・フロスの併用をしていただくとより丁寧なブラッシングができます。
② 奥歯が虫歯になりやすい方
奥歯が虫歯になりやすい方は、奥歯まで毛先がしっかり届くよう、ふつうの硬さのヘッドが小さめまたは薄いなど、先が細い歯ブラシが奥歯まで届きやすくておすすめです。
③ 歯周病がある方
歯磨きをした際に、歯茎から出血をしてしまうようなことがあると、歯周病になっている可能性があります。出血をしてしまう原因は、歯周病によって歯茎が腫れている状態なのに、硬めの歯ブラシで強くブラッシングしてしまうことです。歯茎下がりの原因にもなりますので、歯周病の方は、やわらかめの毛先でヘッドが大きめで厚みがあり、毛先が細い歯ブラシで、歯肉を優しくブラッシングしてあげるのがおすすめです。
歯磨き粉の正しい選び方
・知覚過敏がある
全ての歯(被せ物をした歯を除く)の表面は、エナメル質があり熱い冷たいなどの刺激から歯は守られています。このエナメル質が、正しく合っていない噛み合わせや寝ているときの歯ぎしりが原因で、欠けてしまうことがあります。エナメル質が一部でも欠けてしまうと知覚過敏を発症してしまいます。冷たい物を口にした時に、歯がしみるようなことがある方は、知覚過敏用の歯磨きをお使いください。歯磨きを変えたからといってすぐに知覚過敏の症状がなくなるわけではありませんが、長くご使用していくうちに、症状が和らいでいきます。また、知覚過敏が冷たい物以外を口のしたときにもある場合は、かかりつけの歯医者で知覚過敏用のコーティングをしてもらうといいと思います。
・電動の歯ブラシを使っている
毎日の歯磨きで、電動の歯ブラシをお使いの方は、研磨剤の入っていない歯磨き粉をお使いください。電動歯ブラシは、普通の歯ブラシと違い、毛先の回転数や歯や歯肉にかかる圧力が強いので、研磨剤が入っている歯磨き粉と併用すると歯の表面に傷がついてしまうことがあるためです。また、通常の歯磨き粉には発泡剤が含まれていて歯磨きをすると泡立つような歯磨き粉が多いですが、電動の歯ブラシの場合は、泡立たない歯磨き粉をおすすめします。ジェル状になっているものや、泡状になっているものをご使用していただくといいと思います。
・歯を磨くと血がでる
歯磨きをすると歯茎から出血をしてしまうという方には、歯周病用や歯槽膿漏用など記載されている歯磨き粉をお使いください。歯肉の炎症を抑えてくれ、歯肉を引き締める成分が含まれています。また、今の症状をそれ以上悪化しないように殺菌の成分も含まれおりおすすめです。歯磨きをする際は、力を入れすぎず歯を磨くというより歯茎をマッサージするように心がけてください。
・歯の着色が気になる
歯の黄ばみなどの着色が気になる方には、ホワイトニング効果のある歯磨き粉がおすすめです。ただ、一般的に販売されている歯磨き粉だけで歯が真っ白にはなりません。歯の表面についた茶渋(コーヒーなど)やタバコのヤニなどの汚れは取れやすくなり、再び着色がつくのを防ぐ効果があります。真っ白な歯にするには、歯医者でのホワイトニングをする必要があります。
まとめ
今回は、歯ブラシの選び方と歯磨き粉の選び方についてお話しました。ドラッグストアなどでも沢山の種類が置いてあるので、どれを使えばいいか悩んでいた方の参考になればと思います。歯科医院でしか購入できない歯ブラシや歯磨き粉も販売している医院もあります。定期的にかかりつけの歯医者で定期健診をしているならば、定期健診の時に歯科衛生士に相談されてみてはいかがでしょうか。
歯列矯正治療をしてよかったこと
こんにちは。神戸市垂水区にある歯医者の「ふじよし矯正歯科クリニック」です。
今回は、歯並びや噛み合わせを治す、歯列矯正をしてよかったことをお話していきます。
実際に、私は歯並びを治療して今は保定期間にはいっています。保定から一年以上経過して歯並びも安定していますので、今は、夜寝る時に毎日リテーナーをつけています。
まず、私の矯正治療前の石膏写真と、治療後の石膏写真をお見せします。
矯正治療前の歯並び
矯正治療後の歯並び
どうですか?かなり出っ歯だった私の歯並びがとても綺麗になりました。治療前と治療後の写真を見ると綺麗な歯並びと・正しい噛み合わせ・理想的な歯列弓(Uの字)になったのがわかると思います。私は、親知らず上下4本を昔に抜歯済でしたので、他の歯を抜かずに矯正治療をできました。私自身が、金属アレルギーのため、ワイヤーでの治療ではなくマウスピース治療(インビザライン)で矯正をしました。歯並びの矯正治療をして、私が良かったと思うことを今回は、まとめてみます。
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食べ物がなんでも食べられるようになった
悪かった歯並びを治療することで、今まで食べづらかった物が食べられるようになりました。
私は、上の前歯が出ている出っ歯だったので、お肉を前歯で嚙み切ることができませんでした。以前は小さくしてから食べるか、犬歯や奥歯で噛んで口の中にいれていたように思います。それが、噛み合わせと歯並びを綺麗に整えることで、「前歯で物を噛んで・犬歯でちぎり・奥歯ですりつぶして飲み込む」という、本来の正しい噛み方ができるようになって、硬い物や繊維質の物もすべて食べやすくなりました。
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歯並びが綺麗に整った
私の場合、幼い頃の指しゃぶりが原因での、上顎前突(いわゆる出っ歯)でした。上の前歯が二本でていたので、口を閉じても前歯が隠れず少し見えてしまうような状態でした。(例えば動物のビーバーのような感じです)大人になってからでも、右手の親指がすっぽり上の前歯におさまるほど前歯がでていました。それが、歯列矯正治療をして歯並びを綺麗に整えたら、上下の歯の噛み合い、歯列が正しいアーチ状(Uの字)の歯列弓になり、親指がはいる隙間はなくなりました。
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歯を見せて笑えるようになった
上の歯の出っ歯が原因で、歯が全体的にガタガタしていて、人と話すときや食事の際など、口元の見た目が気になっていましたが、歯列矯正治療で、歯の並びと奥歯の噛み合わせを治すことで、人前でも歯を見せて話せて笑えるようになりました。笑うことに自信がついたように思います。気になっていた歯並びを治療することで、口元の印象がかなり変わります。歯並びが綺麗なだけで、他の人からの印象もよくなり、自分の笑顔に自信がつく以上に相手の自分への印象が高くなります。人はまず見た目から…が第一印象ですからね。歯並びが綺麗に整っているだけで、その人の清潔感もでます。
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歯磨きがしやすくなった
歯列矯正治療をして、歯並びを整えると、とにかく歯磨きがしやすくなります。以前は、ガタガタの歯並びだったので、歯と歯が重なり歯ブラシが届かず磨けない部分がありましたが、今では隅々まで正しく歯ブラシの毛先を歯や歯茎にあてることができ、歯磨きがしっかりできるようになりました。歯磨きがしっかりと正しくできるようになれば、磨き残しがなくなりますので、虫歯や歯周病の予防にもなります。歯並びが悪いと、自分ではしっかり時間をかけて歯磨きをしているつもりでも、歯ブラシの毛先が届かない部分があるため、磨き残しが多くなってしまいます。磨き残しがあると、口臭や虫歯・歯周病のリスクが高くなってしまいます。
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虫歯や歯周病のリスクが減った
ガタガタしている歯を、歯列矯正治療で歯並びを綺麗に整えると、歯磨きがしっかり正しくでき、虫歯や歯周病のリスクが減ります。歯並びがわるいと、どうしても歯磨きをしても磨けない・磨きにくい部分があります。
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普段から口が閉じられるようになった
歯列矯正治療の治療後は、普段からお口をちゃんと閉じられるようになり、口呼吸をしなくなりました。そのおかげで、お口の中の乾燥がなくなり、口臭も減り、風邪をひくのも少なくなりました。前歯が出ている(上顎前突)・奥歯を噛んでも上と下の前歯に隙間がある(開咬)などの歯並びですと、唇がしっかり閉じられないので無意識にお口が開いていることがあります。歯列矯正治療をすることで、歯並びと噛み合わせが正しくなると、お口が普段からも閉じられるようになります。お口がしっかり閉じられていると、鼻呼吸にもなります。
- 歯並びが綺麗と褒められる
矯正治療をしてから、「歯並びが綺麗だね」と褒められることがとても嬉しいです。以前は、人前で笑うことを気にしていたのですが、矯正治療をしてから、逆に自慢できるようになりました。それは、私にとってとても自信に繋がりました。
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歯への意識が高まった
矯正治療をして、歯並びが綺麗に整ってからは、歯磨きがしっかりできるようになり、矯正治療後に虫歯になったことがありません。また正しくきちんと歯磨きができるようになってから歯周ポケットの深さも減り、健康なお口の中になりました。定期的に一般歯科に通い、歯科衛生士さんに歯石除去やクリーニングをしてもらっていますが、「いつもきちんと磨けていますね」って歯医者さんに褒められるお口に中になったのも嬉しいです。
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噛み合わせが整うことでよく噛めるようになった
矯正治療をして、気にしていた上の前歯だけではなく、上と下の奥歯の噛み合わせも正しい位置に整ったなったおかげで、奥歯がしっかり噛めるようになり、何でも食べられようになりました。矯正治療の前は、前歯で肉を噛めなかったり、とうもろこしやリンゴなどかじることも出来ませんでした。前歯だけではなく、奥歯も噛み合わせがあうことで、よく噛む癖もでき、よく噛むことで唾液の分泌もよくなり、その結果、胃などの内臓の負担も減り、全身的に健康になれたと思います。
まとめ
今回は、私自身が実際に歯列矯正治療をして良かったことをお話しました。もし、ご自身やご家族の方・お友達などで、歯並びを気にしているようなかたの参考になればといいなと思います。矯正治療は、金額も高額ですし、治療の期間も長いです。治療中は痛みもありますし、歯磨きがしづらい・口内炎ができやすいなど色々とありますが、治療後のほうが歯は長く使います。歯を健康でいつまでも使えることが長生きの第一歩だと思います。歯並びでお悩みがある方は、一度、当院の歯並びの無料相談にお越しください。
顎関節症について
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1.顎関節症とは
『顎関節症(がくかんせつしょう)』という言葉をご存知でしょうか。
歯科の二大疾患として、むし歯と歯周病が挙げられていますが、最近では顎関節症がむし歯や歯周病に続く第三の疾患として認識されるようになりました。
顎関節症の3大症状として、
・ 顎(あご)を動かすと音が鳴る
・ 顎(あご)が痛い
・ 大きなお口を開けられない
が挙げられます。このような症状を認められる場合、顎関節症と診断される可能性が高くなります。
顎関節症という呼び方をされているため、症状や原因は顎関節にのみあると思われがちですが、肩こりやめまい・頭痛・不眠症などを伴う場合もあります。何が原因なのかハッキリと分かりづらく、どこの科を受診すればいいのか迷われる方も多くいらっしゃるのではないかと思います。基本的には、一度かかりつけの歯医者さん(一般歯科)に相談してみましょう。もし痛みの度合いが大きい場合や外科手術がからむ場合は、口腔外科での対応となります。
また、噛み合わせが悪いことから顎に症状が出たのではないかという考えで、矯正歯科を受診される方もおられます。顎関節に関する知識があり、治療を行っている矯正歯科であれば問題はありませんが、そうでない場合は、かかりつけの歯医者さんや一般歯科で相談してみましょう。
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2.噛み合わせが悪いと顎関節症になるのか
顎関節症になったのは噛み合わせが悪いせいなのかと、矯正歯科へご相談に来られる患者さまがおられます。また、顎関節症を治すために矯正治療を希望してご相談に来られる方もおられます。結論からいうと、治るかどうかは分からないです。治る場合もあれば、治らない場合もあります。噛み合わせが悪い場合でも、顎関節症でない方はたくさんおられます。また、歯並びも噛み合わせも良い場合でも、顎関節症になっている方はおられます。なので、噛み合わせが悪いと顎関節症になるというイコール(=)の関係は成り立たないといえるでしょう。
顎関節症は、特に若い女性の方に起こりやすいとされていますが、若い女性の方だけが歯ならびが悪いということではありません。噛み合わせで言うと、ご高齢になるにつれて〝歯周病により歯を失った〟などのように噛み合わせに問題が起こっていることが多いのではないでしょうか。ですが、顎関節症になっているのは若い女性が多いということから、噛み合わせが悪くても顎関節症になるとは限らないということが言えます。
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3.顎関節症の原因
顎関節症は、複数の原因が重なって起こる疾患だと考えられています。
いくつかの原因が重なって、それぞれが持つ顎関節の耐久力を超えた場合、顎関節症を発症すると言われています。顎関節の耐久力には個人差のばらつきかあります。
顎関節症の原因として挙げられるのは、
・ 不正咬合(ふせいこうごう)
噛み合わせと顎関節症の関係性には様々な話がありますが、噛み合わせにより、偏咀嚼(=食べる時に同じ側ばかりで噛むこと)やブラキシズムを誘発する可能性があるとも言えるでしょう。もともとの歯ならびの噛み合わせが悪い場合だけでなく、むし歯の治療や歯列矯正治療でも起こる可能性があるので注意しましょう。
・ ブラキシズム(歯ぎしり・食いしばり等)
ブラキシズムとは、歯ぎしりや食いしばり・歯をカチカチと噛んで音を立てることをいいます。これらの行為は、筋肉が異常緊張を伴うため、顎関節や頭頚部周囲の筋肉に過度な負担を与えます。時には、健康的な歯が折れてしまったり、ひび割れてしまうこともあります。ブラキシズムといわれる無意識のうちにしている行為は、ストレスが大きく関係していると言われています。
・ 生活習慣
生活習慣とは、顎関節や頭頚部周囲の筋肉に負担をかけている癖のことを指します。例えば、指を吸う・爪を噛む・唇を噛む・鉛筆などの物を噛む・起きている時も口がよく開いている・頬杖・うつぶせ寝などが挙げられます。
・ ストレス
仕事や家庭などでのストレスや精神的な緊張は、筋肉を緊張状態にさせるのでブラキシズムの誘発因子となります。
・ 外傷
外傷とは、〝歯医者さんでの長い治療時間お口を大きく開けている状態が続いた〟 〝顎や頭頚部を強く打って怪我をした〟などのことを指します。
が挙げられます。
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4.顎関節症に関連する不正咬合の種類
不正咬合には様々な種類のものがあります。その中でも顎関節症と強い関連性があるとされているものが4種類あります。
①骨格性開咬(こっかくせいかいこう)
開咬とは、お口を閉じたときに奥歯は接触している状態で前歯は全く噛み合わない状態のことをいいます。開咬は、歯と歯が噛み合う部分が少ないです。そのため、咬合力(=噛んだ時に生じる力)を全ての歯に分散させることが難しくなります。全ての歯に分散が出来ない分、噛み合っている奥歯や顎関節に大きな負担がかかってしまいます。さらに開咬の度合いが大きい程、顎関節にかかる負担が大きくなることも証明されています。
②片側性交叉咬合(へんそくせいこうさこうごう)
偏咀嚼(=食べる時に同じ側でばかり噛むこと)や頬杖をつくなどのような悪い癖がある場合、下顎が側方の方へずれていきます。そうなると、段々と歯も移動し始め、噛み合わせにズレが生じてしまうので左右の高さが変わってくることがあります。また、顔を正面から見たときに歪んでいるように見えることがあります。このような場合、噛んだ時の力が左右で異なるためアンバランスになってしまいます。また、顎関節にかかる力も左右均等ではありません。この状態が続くと、顎関節の位置がずれやすくなってしまうので、顎関節症が起こるリスクが高くなります。
③下顎(かがく)が著しく後退した上顎前突(じょうがくぜんとつ)
噛んだ状態のときに、上の前歯の先端から下の前歯の表面までの水平的な距離をオーバージェットと言います。このオーバージェットは、2~3㎜が理想的な数値とされています。オーバージェットが6~7㎜以上の上顎前突(じょうがくぜんとつ)は顎関節症の可能性が高くなると言われています。
上顎前突は大きく分けて2種類のタイプがあり、上の前歯のみが傾斜して突出している状態の歯性上顎前突と上顎骨が骨格的に突出している骨格性上顎前突に分類されます。また、下顎が後退している上顎前突も含みます。下顎が後退している場合、上顎前突も顎関節症が起こってしまう可能性が高くなります。
④顆頭後退位(かとうこうたいい)と最大咬頭嵌合位(さいだいこうとうかんごうい)との間に4㎜以上の差がある咬合
歯と歯を接触させずに顆頭を最も後退させた位置(顆頭後退位)と歯が最も噛み合っている位置(最大咬頭嵌合位)の差を計測したとき、その差が4㎜以上ある場合は顎関節症のリスクが高くなる可能性があります。
清涼飲料水とむし歯の関係
①むし歯になりやすい飲み物
むし歯になりやすい飲み物として、
・炭酸飲料
・乳酸菌飲料
・清涼飲料水
・果実100%ジュース
などが挙げられます。上記のような飲み物には、一般的に糖質が含まれています。糖質とは、炭水化物から食物繊維を取り除いたものの総称を指します。飲み物に含まれている糖質は砂糖だけではなく、ブドウ糖やオリゴ糖、果糖などがあります。糖質には、糖質としてのエネルギー源の役割がありますが、むし歯菌のエサにもなってしまいます。
また、㏗という値(液体が酸性かアルカリ性かを表す尺度)が低い飲み物をたくさん摂取すると、歯が溶けやすくむし歯になるリスクが高まります。
②むし歯になりにくい飲み物
むし歯になりやすい飲み物として、
・水
・緑茶
などが挙げられます。
お水には一切糖質が含まれておらず、㏗の値も7.0と高いため、むし歯になりにくい飲み物になります。
お茶もお水と同様で、㏗は6.0と高い数値になっており、むし歯になりにくい飲み物といえるでしょう。
③清涼飲料水と虫歯の関係
・清涼飲料水の過剰摂取からむし歯になるメカリズム
砂糖がたくさん入っている清涼飲料水をたくさん摂取することで、お口の中の環境が虫歯になりやすくなってしまうことは皆様お分かりいただけるかと思います。むし歯は、お口の中のミュータンス菌といわれる菌が砂糖をエサとし、酸を作り出します。この酸が歯の表面を溶かし(脱灰だっかい)、歯に穴が開いてしまいます。お口の中は㏗6.8~7.0に保たれています。そこで飲食をすることでむし歯菌が働き、お口の中が酸性に傾きます。飲食が終わると、唾液の働きでお口の中が中性に戻そうとします。そして、溶けていた歯も唾液の働きで修復(再石灰化さいせっかいか)されていきます。
むし歯になりやすい状態は、お口の中が酸性に傾いているときです。
脱灰が起こる㏗の値は5.5以下と言われています。
清涼飲料水などの飲み物には、酸性のものが多くあります。
さらに砂糖も多く含まれているので、酸性の清涼飲料水を1日に頻繫に摂取しているとむし歯になるリスクが高まります。お口の中の状態が酸性である時間が長くなってしまうと、歯が脱灰(溶けること)している時間も長くなってしまうため、再石灰化(溶けた歯を唾液の働きで元に戻そうとする力)が行われず、むし歯にあってしまうリスクが高くなります。
砂糖がたくさん含まれている清涼飲料水には、むし歯になるリスクだけでなく、生活習慣病にもなる可能性があります。清涼飲料水を摂取する時は、時間・回数・摂り方に気を付けることを意識しましょう。
④むし歯を防ぐ食べ方と飲み方
・時間を決めて飲食をする
お菓子などの食べ物をだらだらと食べていたり、糖質が含まれる飲み物をだらだら飲んでいると、お口の中が酸性に傾いている状態が続いてしまいます。お口の中が酸性に傾いている状態が続くと、むし歯になるリスクが高まります。
そして、お口の中が中性に戻るまで時間がかかります。
つまり、食べ物や飲み物に含まれる糖だけでなく、食べる回数や時間もむし歯に関係しています。
・飲食の後は歯磨きやうがいをする
何かを食べたり、糖が含まれる飲み物を摂取した後は歯を磨くようにしましょう。外出時など、歯を磨くことが難しいという方はうがいやお水・お茶を飲むことをおすすめします。
・就寝30分前は飲食を控える
就寝する前に食べたり、糖が含まれる飲み物を摂取することは控えましょう。
睡眠時は、唾液(だえき)の分泌が減少してしまいます。唾液には、酸性に傾いたお口の中を中性に戻そうとする役割があります。なので、寝る前に飲食をしてしまうとお口の中が酸性の状態が続いてしまうことになります。
就寝の30分前には、歯磨きを終わらせることを心がけてみましょう。
⑤むし歯を予防するための対策
・清涼飲料水を他の飲み物に変えてみる
普段の熱中症対策としての水分補給は、お水やお茶でも十分だと言われています。お水を飲むことで、体内の水分含入量を保つことはさまざまなメリットを生み出してくれます。身体の健康や歯の健康にとってたくさんの効果があるので、代表的な例をいくつかご紹介します。
・歯に飲料による色素がつかない
・お口の中を中性に保つことができる
・こまめな水分補給で口臭対策につながる
・むし歯菌のエサとなる糖が含まれていないため、むし歯のリスクを下げる
・基礎代謝が上がる
・体温が上がる
・ニキビなどの吹き出物ができにくくなる
・むくみの解消
・リンパの流れが良くなる
・血液がサラサラになる
・老廃物をデトックスしてくれる
⑥酸蝕歯(さんしょくし)について
酸蝕歯とは、酸性の食べ物や飲み物が歯に触れることで起こり、普段の日常生活で酸の影響を受けています。ですが、唾液の働きにより修復され、バランスが保たれています。しかし、そのバランスが崩れてしまうと酸の影響を過剰に受けて酸蝕が生じてしまいます。その酸蝕の度合いが大きいと酸蝕歯になります。
⑦まとめ
暑い季節になると、冷たい清涼飲料水や炭酸水が飲みたくなる方もいらっしゃるのではないでしょうか。清涼飲料水や炭酸水を飲むときはだらだらと飲むのではなく、食事のときに一緒に摂取するとむし歯になるリスクが低くなります。そして、清涼飲料水や炭酸水を飲んだ後にうがいや歯磨き行うと、更に効果的なのぜひ行うことをおすすめします。
また、寝ている間はお口の中の唾液の分泌が減少します。なので、寝る前に清涼飲料水や炭酸水を飲んでしまうとお口の中が酸性に傾き、歯が溶けやすい状態になってしまいます。唾液が減少してしまうと、唾液がお口の中を中性に戻そうという働きが弱まります。お口の中を中性に保つために、寝る前に清涼飲料水や炭酸水を飲むことは控えましょう。