高齢者に特有な口腔疾患①
○歯周病や虫歯(根面う蝕)
歯周病も虫歯も細菌(歯周病菌・虫歯菌)によって起こります。高齢期には唾液の減少や入れ歯の汚れなどによって、お口の中で細菌が繁殖し、歯周病や虫歯が発生しやすくなります。
また、歯周病などによって歯肉が下がると、歯根が露出します。歯根は虫歯菌に対する抵抗力が弱いため、虫歯になりやすくなります。歯周病菌や虫歯菌は全身にも影響を及ぼします。(脳梗塞・認知症・糖尿病・心臓病・誤嚥性肺炎・骨粗鬆症・関節リウマチ・肥満等)
う蝕や歯周病の予防、治療が進歩し、高齢者における残存歯数が増加することに伴い、歯肉退縮や根面う蝕が増加しています。歯冠はエナメル質に覆われており、根面はエナメル質とは異なり、より硬度の低い象牙質で構成されています。エナメル質と比べると象牙質は臨界pHが高く、少し酸性に傾くだけで酸によって容易に溶けてしまいます。
根面う蝕はどのように進行するか
根面う蝕は、歯肉が退縮して歯根が露出した部位に、歯頚線に沿って環状に進行します。
その発症部位が歯頚部であるため、歯根破折の原因にもなります。もし破折した歯が義歯の鉤歯であった場合には義歯が使用不能となり、一気に咀嚼障害に陥ってしまい、高齢者の口腔機能が低下する大きな要因となってしまいます。
病変部は茶褐色~黒色で高齢者に多く認められます。高齢者でリスクが高まる理由としては、歯肉の退縮と歯根表面の露出、唾液分泌量の低下などがあります。唾液分泌の減少の原因として考えられるのは、全身疾患や薬物の服用などによる影響で唾液分泌量が減少し、根面う蝕のリスクがより高くなります。
また、歯根部の清掃の困難性および糖分の多い食生活などもリスクが高まる理由にあげられます。
根面う蝕の予防
- ①露出根面の清掃:歯ブラシに加え、歯間ブラシ、タフトブラシなどの補助清掃用具の使用
- ➁フッ化物の利用:フッ化物配合歯磨剤やフッ化物洗口
- ③特定の食品への注意:砂糖などの甘味制限や人工甘味料の利用
- ④唾液分泌の改善:唾液腺マッサージ
- ⑤プロフェッショナルケア:定期的な専門的歯面清掃
- などが重要です。
○ドライマウス(口腔乾燥症)
ドライマウスはさまざまな原因で唾液の分泌量が低下し、口腔内が乾燥する病気です。糖尿病や高血圧、腎不全などの病気を介して起こることもあれば、ストレスや筋力の低下、薬剤の副作用でドライマウスになり、唾液が出ないことに対してストレスを感じて、さらに強いドライマウスになる可能性があります。
かむことは唾液の分泌を促し、唾液を分泌する唾液腺は筋肉によって裏打ちされています。しかし、その筋肉が衰え、唾液の抗菌作用、洗浄作用、保護作用、潤滑材などが損なわれ、口腔粘膜の炎症、虫歯の多発、会話・嚥下障害、義歯の不安定などを引き起こします。
また、虫歯や歯周病だけでなく、誤嚥性肺炎などの全身疾患になる可能性があります。ドライマウスの症状は、膠原病(こうげんびょう)の1つである難病のシェーグレン症候群でも現れます。お口の中が乾くと、唾液の持っている自浄作用が失われ、通常よりも感染症になりやすくなります。
特に高齢者は、そのまま放置すると食べ物を飲み込む能力が低下する摂食・嚥下障害から重篤な病気になる可能性があります。
唾液の分泌を抑える薬
降圧剤・抗うつ剤・抗ヒスタミン薬・鎮静剤・睡眠薬・利尿薬・潰瘍治療薬・パーキンソン病治療薬などを服用している方でお口が渇きやすいと自覚がある場合は、かかりつけの担当医にご相談してみてください。
唾液の働き
- ①お口の中の乾燥を防ぐ
- ➁食べ物を飲み込みやすくする
- ③食べカスを洗い流す
- ④お口の中の細菌の増殖を抑える
- ⑤入れ歯の密着度を高める
- ⑥消化を助ける
- ⑦発音をなめらかにする
- ⑧酸によって溶けだした歯の表面を修復する(再石灰化)
- ⑨酸性またはアルカリ性を中和し、虫歯の発生を抑制する
唾液腺マッサージ
唾液腺マッサージは、高齢者や有病者で唾液の分泌が障害されている人のためや、唾液腺の分泌機能を高めるために行われます。唾液腺には感覚神経も分布しているため、唾液腺マッサージは神経機能を高めると考えられています。
- ①耳下腺:指全体で耳の前、上の奥歯あたりを後ろから前に円を描く。
- ➁顎下腺:親指を顎の骨の内側の柔らかい部分に当て、耳の下から顎の下まで順番に押す。
- ③舌下腺:両手の親指をそろえて、顎の下から軽く押す。
※唾液腺マッサージを行う際は、ストレスや緊張状態であると交感神経が優位となり、唾液分泌量が減るため、リラックスした状態で行うと副交感神経が優位となり、唾液分泌を促進されますので、リラックスした状態で行いましょう。食事前や口腔ケアの前に5~10回ほど、痛みを感じない程度の気持ち良いくらいの力で行いましょう。
○誤嚥性肺炎
誤嚥性肺炎とは、食道や胃に送られるはずの食べ物や飲み物、唾液などが主にお口の中の細菌と一緒に気道内に入ってしまうことで起こる肺炎です。
日本人に多い死因として、がん(悪性新生物)、心筋梗塞(虚血性心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)に次いで肺炎・気管支炎があげられます。とくに、肺炎と気管支炎による死亡の9割は65歳以上の高齢者です。
高齢者の肺炎は、お口の中の細菌などが誤って肺に入って発症する「誤嚥性肺炎」の割合が高いといわれ、脳血管障害が多いことも大いに関連しています。
高齢者の肺炎の原因は、気づかないうちに唾液や胃液などが肺に入る「不顕性誤嚥」が多いと言われています。認知症、神経病、高齢化が進むと、咳反射の低下や誤嚥したものを吐き出すことができなくなってくることで、誤嚥しやすくなってしまいます。
誤嚥性肺炎を起こした人の多くは、本人も気づかない、寝ている間に誤嚥を起こしています。
口腔内のケアが行き届かずお口の中で細菌が繁殖していると、さらに肺炎の悪化のリスクは高まります。高齢者は飲み込む機能や咳をする力が弱くなり、口腔内の細菌や逆流した胃液が誤って肺に入ることがよくあります。
そしてその時、細菌を含む唾液も一緒に誤嚥してしまい、菌が肺へ侵入します。
菌を排除する白血球に力がないと、気管支や肺で細菌が増殖してしまい、肺炎を引き起こします。口腔ケアを行うことで舌や口唇などの口腔機能が改善し、食べる量が増え、栄養状態が図られ、免疫機能の向上につながります。たとえ口から食べ物を摂っていない場合でも、口腔内では粘膜の老廃物、痰、プラークなどの汚れは溜まります。
また、唾液の分泌量が減少し、口腔の自浄作用が働かなくなり、細菌が増加することで誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
しかし、誤嚥性肺炎はお口の中を清潔にすることで発症リスクの低下が明らかになっています。症状としては食事中のむせや常に喉がゴロゴロ鳴っている、唾液が飲み込めないなどは疑わしい症状です。
・正常な嚥下と誤嚥の違い
正常な嚥下とは、「食べ物や唾液を認知し口から取り込み、食道を通って胃へと運ぶ動作」です。一方誤嚥とは、「食べ物や唾液が、食道ではなく気管や肺に入ってしまうこと」です。
食べ物を飲み込むときは、喉頭蓋が気管に蓋をして、唾液や食べ物が食道に流れる仕組みになっています。しかし高齢になると、嚥下反射や咳反射が低下するため、誤嚥を起こしやすくなります。
・歯周病と誤嚥性肺炎の関係
誤嚥性肺炎を起こす細菌の多くは、嫌気性菌(酸素のないところで発育する菌)です。歯周病原性細菌は、酸素の少ない歯肉の中で増える嫌気性菌です。誤嚥性肺炎からみつかる細菌は、歯周病原性細菌を中心とした口腔細菌です。
・誤嚥性肺炎の予防
さまざまな薬を用いる内科的な予防法のほかに、スケーリング(歯石除去)や歯面清掃(プラーク除去)などの口腔ケアにより、口腔内の常在菌を減らしたり、食後に一定時間(2時間程度)座って上体を起こした体位に保つことで、胃液逆流を防ぐことも誤嚥性肺炎の予防にとって大切です。
さらに、高齢者では摂食・嚥下に関連する筋肉のマッサージをすることで、嚥下反射が改善し、誤嚥性肺炎の予防につながります。
自分の口臭気になりますか?口臭とは?
こんにちは。神戸市垂水区にある歯医者の「ふじよし矯正歯科クリニック」です。
今回は、「口臭」についてお話していきます。
皆さんは、自分の口臭が気になりますか?気にしたことがある、または誰かに指摘されたことはありますか?匂い繋がりで言うと体臭も口臭と同じで、実は無臭の人はいないのです。無臭では無いので少なくとも匂いはあります。
ただ、その匂いがキツイかきつくないか・匂いがするかしないかでだけで違うのです。でもいい匂い(例えば香水や柔軟剤など)なら「いいにおい~」って言えますが、臭いときは伝えにくいですよね。
コロナが流行っている時に、マスク生活になりご自身の口臭が気になった方も多いのではないでしょうか。口臭のおよそ80%は、お口の中(口腔内)が原因なのです。相手が不快になってしまう匂いは、マナーやコミュニケーションにも影響がでてしまいます。
ひとえに口臭といっても種類があり、原因も様々あります。改善できるよう是非最後まで読んでいただければと思います。
口臭の種類
生理的なときの口臭(生理的口臭)
さきほど、口臭が無臭な人はいない。と言いましたが、それは、お口の中には沢山の細菌がいます。普段の生活の中で、食べたり飲んだり話したりして唾液がお口の中にでて中和されることによって匂いはほとんど感じません。
ですが、性別や年齢問わずに誰しもがあるのが生理的なことからくる口臭です。例えば、朝起きた時(寝ている時含む)は、唾液の分泌が少なくなるのでお口の中が乾燥してしまいます。唾液が少なくなることでお口の中の細菌が増えて匂いをはなつようになります。
この時の匂いは、歯磨きをすればなくなるので気にしすぎる必要はありません。
また、お腹が空いている空腹時や、緊張している時にお口の中が乾いてしまう時も、唾液が少なくなりますので口臭が出やすくなりますが、お水やお茶を一口飲む・キシリトールのガムを噛むだけでも匂いは改善されます。
食べ物や飲み物や嗜好品からの口臭
お口の中が臭くなる食べ物といえば、一番に思い浮かぶのはニンニクではないでしょうか。
他には、ニラや玉葱、ネギ類も食べた後は口臭がきつくなります。飲み物だと代表的なものは、お酒になります。お酒を飲んだあとに、「お酒くさい」と言われたことありませんか?それは、お酒(アルコール)による口臭なのです。
嗜好品の口臭一位は、タバコです。紙タバコが一番きつい匂いがしますが、電子タバコや加熱式タバコでも匂いが結構します。ニンニクなどの食品を食べた匂いは、時間がたてば無くなりますが、タバコは吸えばその都度にその後ずっと匂いますので、他の人から不快に思われ迷惑になるかもしれません。
病気からの口臭(病的口臭)
病気からの口臭は、病気が原因でおきる口臭のことで「お口の中の病気」と「身体の病気」とあります。お口の中の病気は、虫歯や歯周病のことで、虫歯も放置し進行してくると口臭がきつくなります。
他には舌の汚れ(舌苔)や、歯石が多くたまっていると口臭の原因になります。身体の病気だと、膿がでる副鼻腔炎や痰がでる扁桃炎(耳鼻咽喉)、逆流性食道炎や胃潰瘍(消化器内科)も口臭の原因になります。
全身の疾患ですと、肝臓病や腎臓病、糖尿病も口臭の原因になり、病名によって匂いも異なります。明らかに、食べ物による匂いと違い独特な匂い(アンモニア臭やアセトン臭)がします。
ストレスからの口臭
人は過度なストレスを受けると唾液が少なくなります。また強い不安を感じることでも唾液が減ります。
これは、自律神経の乱れによって唾液の量が少なくなることが原因になります。唾液の減少は、薬の副作用でもおきます。唾液が減ってしまうことで、お口の中が常に乾燥してしまい、口臭につながります。
ホルモンバランスが崩れることによる口臭
ホルモンバランスが崩れておこる口臭は、主に女性に多くなります。それは、女性ホルモンと口臭が大きな関連性があるからなのです。
エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の二種類のホルモンを女性ホルモンといいますが、エストロゲン(卵胞ホルモン)の量は、初潮がくる頃から徐々に増え始めて、更年期(閉経)にむけて減っていきます。
また、このエストロゲン(卵胞ホルモン)の量は、生理の前や生理中・妊娠している時も大きく変わります。エストロゲン(卵胞ホルモン)が減ると、唾液の量も減っていきます。とくに閉経後は、急激に女性ホルモンが減少してしまうので、唾液の量も減ってしまい口臭が気になるようになります。
心理的な口臭
ほんとうはそんなに匂わないのに、自分で臭いと思いこんでしまうのが心理的なことからくる口臭です。「気にしすぎ」と一言で終わる話ではないのが現状です。歯科医院で、口臭を調べてくれるところもあります。一度、ご相談いただければと思います。
口臭の原因(口腔内が原因の場合)
歯周病
口腔内(お口の中)が原因での口臭の場合、一番はこの歯周病です。
歯周病が悪化すると歯がグラグラしてきて最後には歯が抜けてしまいます。歯がグラグラするのは、歯の根っこを支えている骨が溶けてしまい歯と歯茎の間(歯周ポケット)が深くなり細菌がたまりやすくなります。歯磨きの時に出血する・歯茎が腫れてきている方は、歯科医院での治療をおすすめします。
虫歯
虫歯もほっておくと進行してしまい、虫歯の穴が大きくなっていきます。この穴に食べ物のカスがたまって口臭の原因になります。小さい虫歯のうちに治療をする必要があります。
舌苔(ぜったい)
舌は通常、ピンク色をしています。舌の表面に白い苔のようなものがついていることを舌苔(ぜったい)といいます。
この白い部分は、汚れで細菌やたんぱく質が固まったものです。お口の中の口臭の原因になるこの舌苔ですが、舌ブラシをいつもの歯磨きにプラスするだけで改善します。舌も軽く磨く習慣をとりいれてみてください。
歯垢や歯石
歯磨きをしても残る、歯垢(プラーク)や歯石も口臭の原因になります。
とくに歯石は歯磨きで取り除くことができないので、歯科医院できちんと歯のクリーニングをしてもらうことをおすすめします。ぜひ、定期的に歯科医院に通っていただきたいです。
唾液が減る
唾液の量が減ってしまうと、お口の中が乾燥して口臭が出やすくなります。普段あまり気にしてないと思いますが、唾液はお口の中を隅々まで洗浄してくれる効果があります。
食べ物をよく噛む・言葉を話すことでお口を動かすと唾液腺から唾液が分泌されます。寝ているときは食べる話すことがないため、唾液が出ません。唾液の分泌がないので朝起きたときにお口の中が乾燥して口臭がきつくなります。
また、唾液は加齢によっても減っていきます。
入れ歯や矯正の装置
お口の中に、入れ歯や矯正の装置が入っていると、唾液の成分のたんぱく質が付着し、口臭の原因になります。
取り外すことができるものなら、毎日の洗浄を行うことで匂いは少なくなります。金属が入っている入れ歯や矯正の装置の場合は「部分用入れ歯やリテーナー用」などの洗浄剤をお使いください。
お口の中のガン
お口の中の病気として、口腔がんや舌がんなどもあります。自分では気づきにくいのですが、なかなか治らない口内炎などある場合は、歯科医院の受診をお願いします。
まとめ
今回は、口臭についてお話ししました。
お口の中を清潔に保つだけでも防げる匂いがありますので、普段の日常生活で、歯磨き+舌ブラシを使う・フロスや歯間ブラシも併用するなどで匂いはかなり軽減されます。
歯科医院によっては、口臭チェッカーを置いてあるところもありますので、定期健診のときにご相談してみてはいかがでしょうか。
歯列矯正治療中の引っ越しについて
こんにちは。神戸市垂水区にある矯正歯科専門医院のふじよし矯正歯科クリニックです。いつも当院のコラムをご覧いただきありがとうございます。今回は、「矯正治療中に引っ越しをすることになった場合、どうすればいいのか」ということについてお話していこうと思います。
引っ越し先で今の矯正治療も続きを行ってもらえるのかどうかという事や費用、転医の流れなどについて参考にしていただければと思います。
治療の引継ぎについて
歯列矯正治療は基本的に年単位でかかる期間の長い治療です。もし、矯正治療を行っている期間中に進学や転勤などの都合で、遠くに引っ越しをすることになった患者さまは当院でも実際におられます。そのような場合、歯列矯正治療には転医という方法があります。きちんとした転医の手続きを行うことにより、引っ越し先でもスムースに歯列矯正治療を続けることが可能です。
転医を行うには、今までの治療の経過や初診時に来院された時の歯型の模型の複製したものなどの資料が必要になります。これらの資料を揃えて転医を行います。転医資料を準備するためには約一ヶ月の期間が必要になります。引っ越しを行うことが分かり次第、早めに通院中の矯正歯科の先生に相談しましょう。
転医先の探し方について
転医先の探し方は、歯科医院によって異なります。当院では患者さん自身で探していただいております。
流れとしましては、転医資料を引っ越し先で通院が可能な矯正歯科医院へ持って行っていただくことになります。なるべく、今まで行ってきた矯正治療と同じような進め方だと患者さんの負担が軽減されるのではないかと思います。転医先を探すときは、治療方針や治療内容が同じような歯科医院なのか調べてみるのも良いかもしれません。
しかし、引っ越し先の矯正歯科医院の治療方針や治療内容によっては、そのまま矯正治療が引き継ぐことが可能なのかは行ってみなければ分かりません。使用している装置が、引っ越し先の矯正歯科医院では取扱いのないものだと、引き継ぐことが出来ず全て作り直し、付け直しになる可能性もあります。事前にホームページなどを見て情報収集を行ってみたり、問い合わせて確認してみるのも良いかと思います。
転医による費用について
矯正治療中に転医する場合の費用の返金や手続きなどは歯科医院によって異なります。当院では、矯正治療中に転医を行うことになった場合、既にお支払い済みの方は行われた治療の清算を行い、残りを返金させていただきます。
また、治療の進行具合に対して未払いの治療費に関しましてはご入金をお願いいたします。
転医資料としてご入金の状況は転医先にも伝わるようにいたしますが、転医先でご返金分のみで矯正治療を引き継ぐということはあまりありません。詳しくは転医先の矯正歯科医院で確認しましょう。
矯正治療は多くの方が自費診療となります。そのため、歯科医院によって費用が異なります。また、転医資料を持って行った場合でも、新たに転医先で資料をとるために検査費が必要となる場合があります。他にも、新たに転医先で矯正装置の作り変えを行う必要がある場合も追加費用がかかる可能性があります。
矯正治療中の転医の流れについて
矯正治療中に引っ越しが決まったときは、なるべく早めに通院中の矯正歯科へ相談しましょう。転医資料を準備するには約1ヶ月の期間が必要です。矯正歯科医院によりますが、転医資料を作成するには費用が掛かる場合がございますので、確認しておくといいと思います。紹介状と転医資料を転医先となる歯科医院に持っていくことで、転医先の歯科医師にも分かりやすく、治療の再開もスムーズに行えるでしょう。
当院では、引っ越し先の土地に知り合いの歯科医がいる場合のみご紹介は可能ですが、基本は患者様ご自身で転医先を探していただくことになります。
転勤や進学などで引っ越しの予定が出来た場合は、歯科医師やスタッフにお気軽にご相談ください。
もし、矯正治療が始まる前に引っ越す予定が出来たときは事前に伝えて、矯正治療を開始するタイミングなどを歯科医師に確認しておくと良いでしょう。
当院では、歯ならびのご相談に来られた際に、引っ越しをすることが分かっている患者様には、引っ越し先で矯正治療を開始することをおすすめしています。なぜなら、先程もご説明させていただいた通り、転医資料や紹介状の作成に費用が発生するということと、転医先でも治療費や歯科医院によっては検査費用が発生することで、患者様が二重に費用をご負担しなければならないからです。
転医をおすすめしない場合について
矯正治療の進み具合によっては、転医をおすすめしない場合もあります。それは、転医することで治療期間が予定より長くなってしまう場合やもうすぐ終わりそうな治療段階で転医することで費用が余分にかかってしまう場合です。
矯正治療が残り短い期間で終わりそうな時や保定期間に入り通院間隔が長くなり、歯科医院に通う回数が少なくなってきた時は、引っ越し先の歯科医院に転医するのではなく、通院中の歯科医院に通い続けるというのも一つの手段です。転医するにあたっての手間や費用のことを考えると通い続けるという選択をする患者様も珍しくはありません。
転医先の歯科医院への受診について
患者さまご自身で転医先を探す場合、通院ができそうな歯科医院が見つかり次第まずはその歯科医院に直接電話をしてみると良いでしょう。その際には、転医希望だという趣旨を必ず伝えてください。
実際に行ってみないと歯科医院の雰囲気やスタッフなどわからないこともありますので、複数の歯科医院を見て回るのも良いでしょう。この時、持参した転医資料は必ず返却してもらうようにしてください。転医資料は転医先の歯科医院に提出することになります。
固定式矯正装置と取り外し式矯正装置について
こんにちは。
神戸市垂水区にある矯正歯科専門医院のふじよし矯正歯科クリニックです。
いつも当院のコラムをご覧いただきありがとうございます。今回は、「固定式の矯正装置と取り外し式の矯正装置」についてお話していこうと思います。
矯正装置には、固定式のタイプと取り外し式のタイプがあります。それぞれの特徴やメリット、デメリットなどをお話しようと思います。
固定式矯正装置について
固定式矯正装置とは、自分で取り外しが出来ない・お口の中(歯)についたままの状態である装置のことです。この固定式装置は歯科医院で着脱を行います。一度装着すると自分で外すことはできません。
歯列矯正治療といえば、歯に装置(ブラケット)とワイヤーをつける矯正装置を思い浮かべる方が多いと思います。このような装置(ブラケット)は、固定式矯正装置に含まれます。
固定式矯正装置のメリット
- ・自分で取り外しを行わなくていいため、矯正装置や使用時間などの自己管理を行う必要がない。
- ・ワイヤー矯正治療などのワイヤーを使用した矯正装置の場合、ワイヤーを調整することで細かい歯の動きが行える。
- ・矯正装置が歯についたままであるため、矯正の力を加え続けることができる。
固定式矯正装置のデメリット
- ・装置がついたままなので歯磨きが行いづらい、歯磨きが難しい。
- ・装置の種類やつける位置によっては、喋りづらい場合や舌などにあたって擦れる場合がある。
- ・矯正装置がお口の中の粘膜にあたっていたり、擦れることで口内炎ができることがある。
取り外し式矯正装置について
取り外し式矯正装置とは、主に子どもの治療(Ⅰ期治療)に使用している装置やマウスピース型矯正のことをいいます。
子どもの取り外し式矯正装置の使用時間は1日10時間以上でお願いしています。マウスピース型矯正の場合だと、22時間以上の着用をお願いしています。
取り外し式矯正装置のメリット
- ・装置を取り外して食事を取ることができる。
- ・装置を取り外して歯磨きが行えるので歯が磨きやすい。
- ・ワイヤー矯正治療と比べるとマウスピース型矯正治療の場合だと、マウスピースは薄いため比較的喋りやすい。
- ・見た目が気にならない。
- ・装置を正しくお手入れすることで、清潔に保つことができる。
取り外し式矯正装置のデメリット
- ・自分で取り外しが可能なので、使用時間を守らなければ歯列矯正治療が進まない。
- ・マウスピース型矯正の場合、使用時間や交換頻度などの自己管理を行わないといけない。
- ・細かい歯の動きが行いづらい場合がある。
- ・紛失してしまう可能性がある。
- ・装置の取り外し自分で行うため、装置を外している時間は歯が後戻りしている時間となる。
取り外し式矯正装置のお手入れ方法
当院で実際におすすめしている矯正装置のお手入れ方法をご紹介いたします。
まず、装置を外してすぐ流水下ですすぎましょう。この時、指でぬるぬるしている唾液(つば)を落とすと良いです。次に歯ブラシでやさしく装置を磨きましょう。熱湯は装置が変形してしまう可能性がありますのでおやめ下さい。必ずお水で洗い流すようにしましょう。
必要があれば、中性洗剤を使用するのもいいと思います。週に1~2回ほど、矯正装置用の洗浄剤を使用するのも良いかと思います。
ただし、30分以上洗浄液に浸け置きをするのはやめてください。矯正装置が破損してしまう原因となる可能性があります。洗浄剤を使用することで、矯正装置のにおいがすっきりと取れます。また、取り外し式矯正装置のケースも清潔にしておきましょう。矯正装置用のケースも洗い、清潔にしておくことをおすすめします。矯正装置と矯正装置用のケースをきれいにお手入れした後は、しっかり乾燥させましょう。湿気たままだと、矯正装置やケースにカビが生えてしまいます。お口から矯正装置を外して、そのままケースにしまってしまうと湿度と温度により細菌が繫殖してしまいます。
取り外し式矯正装置で気をつけること
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熱、高温に気をつけましょう
- 取り外し式矯正装置の床部分はレジンで作られています。高温の車内に放置したままの状態や、熱湯で矯正装置を洗浄してしまうと矯正装置が変形してしまう恐れがあります。
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紛失に気をつけましょう
- 子どもの治療(Ⅰ期治療)に使用している床装置などに関しては、旅行や帰省などのお泊りに出かける時は、矯正装置を持って行かないことをすすめています。
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装置がはまらなくなってしまったときは...
- 数日間の旅行などで、装置が出来ていない場合や矯正装置を着用することを忘れていた等の理由で久しぶりに矯正装置を装着してみると、「矯正装置がはまりにくい」「矯正装置がきつい」「矯正装置が入らなくなった」ということが起きます。
これは、歯が後戻りしてしまったからなのです。少しきつい場合でも、矯正装置を装着することができるようでしたら、毎日指定された時間をきちんと守って装着していればリカバリーすることが可能です。しかし、「矯正装置を正しい位置で装着することができない・浮いている」というような場合は調整する必要があるので、一度通院中の矯正歯科へ行きましょう。また、どこか痛くて矯正装置を装着することができない場合も調整をする必要があるので通院中の矯正歯科で相談しましょう。
歯がしみる?知覚過敏の原因と予防の方法について
こんにちは。神戸市垂水区にある歯医者の「ふじよし矯正歯科クリニック」です。
今回は、知覚過敏についてお話していきます。
皆さん、冷たい飲み物や食べ物を口にした時に、歯がしみた経験はありませんか?冷たい飲食物以外にも、熱い物や歯ブラシの毛先が触れたりすると痛むのも知覚過敏の症状になります。食事をするのにも、歯磨きにも影響がでてしまう知覚過敏はどうしてなってしまうのか?その原因のお話と予防の仕方と治療の方法についてお話していきます。
知覚過敏とは?
歯磨き粉などのテレビのCMでも度々出てくる「知覚過敏」とは、虫歯になっていない歯がしみてしまう症状のことを言います。正式な名称は「象牙質知覚過敏症(ぞうげしつちかくかびんしょう)」と言います。歯がしみるから虫歯かも?と思い、歯医者に行っても虫歯になっていない、けど歯がしみて飲食がしにくい場合は、知覚過敏になっています。歯のしみ方や痛みは人それぞれで違い、「ツーン」・「ジーン」・「ズキッ」など痛みの感じかたがあります。
健康な歯は、エナメル質に歯が覆われています。実はエナメル質というのは、人の体の中で一番硬く、その強度は鉄や骨より高いのです。普段は、このエナメル質によって歯は守られているので、熱いもの・冷たいもの・硬いものを飲食しても、歯が消耗することなく食事ができています。このエナメル質の下には、象牙質があります。そして象牙質の中には歯髄(しずい)と呼ばれる歯の神経が通っています。
何らかの原因で、エナメル質が無くなってしまって、薄くなってしまった箇所は象牙質がむき出しになってしまっていて、痛みが歯髄を伝ってでてしまうのが知覚過敏です。
知覚過敏がおきる原因
歯肉(歯茎)の退縮(歯茎下がり)
知覚過敏になってしまう一番の原因は、加齢や歯周病によって歯肉がさがってしまう「歯肉退縮(しにくたいしゅく)」です。若い頃にくらべて見えている歯が長くなった?と思うことはありませんか?それは、加齢や歯周病が原因による歯肉退縮になっているからです。加齢は誰しもが止めることができませんが、今以上に悪化させないことはできます。毎日の丁寧で正しい歯磨きを心がければ大丈夫です。
歯のエナメル質のすり減り
普段の生活で、上と下の奥歯の状態を気にしたことはありますか?本来、上と下の奥歯が噛みあう又は歯があたる時は、話す時と食事の時だけです。食べたり話したりしていな時、例えばテレビを見ている・スマホを見ている・本を読んでいる・ゲームをしている・お仕事中(パソコン使用中)・車や自転車の運転中・お買い物中・などなど、普段の何気ない生活の中で少しでも奥歯があたっていると、上と下の圧力が常に歯にかかってしまい、エナメル質がだんだんとすり減ってしまいます。また、過度な力での間違った歯磨きをしていると同じようにエナメル質がすり減ってしまう原因になります。
歯のくいしばりや歯ぎしり
寝ている時、自分では気づかないのですが、歯ぎしりをしていると家族や友人に指摘されたことはないですか?また日中、運動や勉強、お仕事中に無意識に奥歯をぐぅっと噛みしめていませんか?それは、歯のくいしばりといい、歯ぎしりと同様に歯が摩耗(まもう)してしまい歯が欠けてしまい、奥歯のエナメル質がすり減ってしまいます。
歯の欠けやひび割れ
日中の歯のくいしばりや寝ている時の歯ぎしり、間違った歯磨きの方法などで、歯の表面を傷つけてしまうと歯が欠けたり、ひびが入ったりします。歯に過度な力がかかると「くさび状欠損」(歯の表面の象牙質が剥がれてしまっている状態)がおこりやすくなり、その部分がしみたりするようになります。
酸性の食べ物や飲み物の取りすぎ
お酢や炭酸飲料など酸性の食べ物を食べていたり飲み続けていると、お口の中の状態が酸性になる時間が多くなり、歯の表面のエナメル質が溶けてしまうことがあります。エナメル質が溶けてしまうとその部分が知覚過敏をおこしてしまいます。
歯のホワイトニング
歯のホワイトニングをすると、ホワイトニングの薬剤での副反応で知覚過敏のような歯がしみる症状がでます。ホワイトニングの薬剤の濃度が高すぎたり、薬剤の量が多いとさらに歯がしみる原因になります。とくにホームホワイトニングの場合は、薬剤をつけすぎないように、時間も守るように気をつけてください。必ず歯科医師の指示通り行なうようにしましょう。
知覚過敏にならないための予防方法
正しい歯磨きの仕方でブラッシングをする
毎日の歯磨きの仕方を正しくするだけで歯の負担は少なくなります。テレビやスマホを見ながらのなどのナガラ磨きでも歯ブラシの角度や力加減など気をつけて正しく磨けていれば問題ありません。自分の歯磨きが正しくできているか、かかりつけの歯科医院で確認してもらうと良いと思います。
知覚過敏用の歯磨き粉を使う
お近くのドラッグストアにも沢山の歯磨き粉が売られていると思いますが、パッケージに「知覚過敏用」と書かれている歯磨き粉をお使いください。知覚過敏用の歯磨き粉には、歯の神経に刺激が伝わりにくい成分が含まれています。一回だけの使用で効果はでないので、継続して使用をするようにしてください。
歯科医院での定期健診
3か月~4か月ぐらいの間隔で定期的な歯科医院での検診で、知覚過敏の早期の発見と治療や対策ができます。学校やお仕事でお忙しいとは思いますが、歯科医院の定期健診はとても重要です。
知覚過敏の治療の方法
知覚過敏用のコーティング剤を塗布する
知覚過敏の症状があれば、歯科医院で知覚過敏用のコーティング剤を塗布することで、しみるのを防いでくれます。薬剤(コーティング剤)を歯に塗布して照射して固めるものや、塗布して数分待つと固まるような薬剤があります。あくまでもコーティング剤なので取れることがありますので定期的に塗布することをおすすめします。
就寝時用のマウスピースを作る
寝ている時に歯ぎしりをしている方には、就寝時に使用するマウスピース(ナイトガード)を歯科医院で作るのも効果があります。マウスピース(ナイトガード)を使用することによって歯ぎしりを抑えて歯の表面の摩耗を防ぎます。
CR(コンポジットレジン)で治療する
知覚過敏用のコーティング剤ではなく、歯科医院で虫歯の治療の時に使うことが多いCR(コンポジットレジン)で治療することもあります。虫歯治療でも使われているので、コーティング剤よりも効果が長く続き取れにくいという特徴があります。知覚過敏の症状がどの歯ののどの部位にもよりますが、コーティング剤を塗布するかCRで充填するかは、歯科医院でご相談ください。
歯の神経を抜く
知覚過敏用のコーティング剤やCR充填、就寝時用のマウスピース(ナイトガード)など使用しても知覚過敏の症状が治まらない場合は、痛みがある歯の神経を抜く治療もあります。歯の神経を抜くと痛みは無くなりますが、歯がもろくなったり、歯が黒く変色してしまうこともあり、最終の手段になります。
まとめ
知覚過敏の痛みは地味に痛いので、ならないように予防をするか、早めに治療をするのが良いです。いつもの歯磨きの仕方や歯ブラシの毛先の硬さなどで歯の表面にあるエナメル質を傷つけないようにブラッシングをするよう心がけてください。少しでも歯に痛みがある場合は、知覚過敏ではなく虫歯の可能性もあります。自分で判断せずにかかりつけの歯科医院で診察をしてもうようにしましょう。
喫煙による全身への影響
喫煙による影響は、口腔内への影響だけでなく全身への影響にも大きく関与しています。
○たばこはがんのリスクを高める
たばこの煙には約200種類以上の有害物質が含まれており、そのうち約60種類に発がん性があるとされています。
たばこの煙の通り道の咽頭や肺だけでなく、有害物質が吸収される胃や腸など、これらの有害物質は全身の影響を与えます。有害物質が血液や尿に溶けて通る肝臓や腎臓、尿路などでもがんが発生するリスクが高まります。
たばこと最も関連が深いとされているがんは、肺がんや喉頭がん、口腔がんなど、直接たばこの煙に触れる部位です。しかし、たばこの有害物質は血液にのって全身に運ばれるため、胃がんや食道がん、肝臓がん、膵臓がん、膀胱がん、子宮頸がんなど、たばこの煙が直接触れない部位のがんでも発症するリスクは高まってしまいます。
がんは、3大死因のひとつで最も死亡率が高い病気で、長年日本人の死因第1位を占めています。
厚生労働省の「人口動態統計(確定数)」(2023年)によると、死因の1位は悪性新生物(がん)24.3%、2位は心疾患14.7%、3位は老衰12.1%、4位は脳血管疾患6.6%、5位は肺炎4.8%でした。
がんの原因の多くは、生活習慣が大きく関連されており食生活や飲酒、運動などの生活習慣がある中で、喫煙が最も危険因子とされています。喫煙は肺がんだけでなく、多くのがんのリスクを高めてしまうほかに、受動喫煙の方も肺がんなどの健康被害をもたらしてしまいます。
喫煙をしている男性は、非喫煙者に比べて肺がんによる死亡率が約4.5倍高くなっているほか、それ以外の多くのがんについても、喫煙による危険性が増大することが報告されています。
○循環器疾患
心筋梗塞や脳梗塞などの発症には、食事や運動など様々な生活習慣が関わっていますが、その中でも非常に重要な危険因子とされているのがたばこです。たばこには、血液中の悪玉コレステロールであるLDL-コレステロールを増やし、善玉コレステロールであるHDL-コレステロールを減らす作用や、血圧を上昇させる作用などがあります。
これらの相互作用により動脈硬化が進行し、狭心症や心筋梗塞などの心疾患、脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患などのリスクが高まるとされています。喫煙は、動脈硬化と関連した病気の原因となることが報告されています。
さらに、喫煙によって糖尿病が発症しやすくなるだけでなく、すでに糖尿病にかかっている人が喫煙し続けると、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病性腎症等の合併症リスクが高まることが分かっています。
喫煙者は、非喫煙者に比べて虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症等)の死亡の危険性が1.7倍高くなるという報告があります。また、脳卒中についても喫煙者は非喫煙者に比べて危険性が1.7倍高くなるという報告があります。
○呼吸器疾患
喫煙により空気の通り道である起動や肺自体へ影響を及ぼすことが知られています。
このため、喫煙は慢性気管支炎や呼吸困難、運動時の息切れなどの特徴的な肺気腫や喘息等の呼吸器疾患の原因と大きく関連しています。さらに、歯周病の原因とも関連があるという報告があります。
喫煙は、さまざまな呼吸器症状を引き起こし、喘息のリスクを高めます。
また、COPDの発生と、それによる死亡を引き起こす可能性があります。それだけでなく、肺機能の発達障害や呼吸機能の早期の低下にもつながります。
さらに、新型コロナウイルスに感染したとき、喫煙者は非喫煙者と比較して、重症となる可能性が高いことが報告されています。たばこの煙には多数の有害化学物質が含まれており、喫煙は全身の諸器官に悪影響をもたらします。
喫煙は呼吸器系の形態的・機能的変化をきたし、様々な症状や疾患を引き起こします。喫煙者は非喫煙者に比べて、咳・痰・喘鳴(ぜんめい:気道が狭くなっているため、呼吸時にゼーゼーという異常音が連続的に発生される状態)・息切れなどの症状が多くみられます。また、喫煙は気管支喘息のリスク因子とされています。特に、受動喫煙と小児の喘息には関連性があることが認められています。
・慢性閉塞性肺疾患(COPD)
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、肺気腫や慢性気管支炎などを併発する疾患で、別名「たばこ病」といわれているくらいたばこの煙が原因で起こることが多いです。
呼吸器の病気は感染によるものが多いですが、慢性閉塞性肺疾患は生活習慣と深い関わりのある病気です。たばこの煙や大気汚染、粉塵などが原因であり、慢性閉塞性肺疾患患者の90%以上が喫煙者といわれており、喫煙が最大の危険因子とされています。
喫煙者の発症リスクは、喫煙を始めた年齢、喫煙本数、喫煙年数など喫煙量に関係し、喫煙量が多い人ほど発症リスクが高くなります。また、喫煙者だけでなく受動喫煙も慢性閉塞性肺疾患の危険因子となっています。
慢性閉塞性肺疾患の発症リスクは、喫煙年数などに比例して高くなるので、早く禁煙すればするほど予防効果は大きくなります。すでに慢性閉塞性肺疾患を発症している方は、直ちに禁煙することで治療効果が上がり、進行を止めることができます。受動喫煙による被害が出ないためにも、直ちに喫煙者は禁煙することをおすすめします。
・新型コロナウイルス
新型コロナウイルスは、主に肺を攻撃する感染症です。
喫煙は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスク要因となります。喫煙者あるいは過去に喫煙していた人は、非喫煙者に比べて新型コロナウイルスに感染した場合の重症化リスクや死亡リスクが高まることがわかってきました。
WHOでは、高齢者や心血管疾患、がん、呼吸器疾患、糖尿病など基礎疾患(持病)のある人、肥満者などとともに、喫煙も新型コロナウイルス感染症の重症化要因であると述べています。禁煙をすることは、新型コロナウイルスの対策のひとつにもつながります。
○骨粗鬆症
たばこは、胃腸の働きを抑制し、食欲をなくして、カルシウムの吸収を妨げます。
女性ホルモン(エストロゲン)が骨の新陳代謝に関わっていますが、喫煙によって女性ホルモンの分泌を減少させてしまい、骨粗鬆症になる可能性が高まります。喫煙は、骨密度の低下を進めるため、骨粗鬆症や骨折にも大きく関係しています。
○脳や精神面などにも影響する
喫煙を続けている人は、禁煙をした人に比べて不安が強く、うつ病になるリスクが高くなり、またストレスも高いことが報告されています。研究では、中年から高年までの喫煙を続けている人は、喫煙しない人に比べて認知症になるリスクが高くなると報告されています。
○ニコチン依存症
喫煙がやめられない原因に「依存症」があります。依存性とは、あるものをやめようと思っても強い渇望があり、やめられなくなった状態をいいます。
たばこの成分であるニコチンによるニコチン依存は、国際疾病分類(ICD-10)や精神医学分野(DSM-IV)において独立した疾患として扱われており、たばこに依存性があることは確立した科学的知見となっています。
たばこを吸うと、たばこの3害に含まれるニコチンによって脳内でドーパミンという物質が大量に放出され、このドーパミンが快感を生じます。しかし30分もすると、逆にイライラしたり、落ち着かないなどの離脱症状(禁断症状)が現れてきます。
この離脱症状を解消するために、またたばこを吸うというその繰り返しが「ニコチン依存症」です。一度ニコチン依存症になってしまうと、たばこをやめるのが困難となり、ニコチン依存症から抜け出すのは危険薬物でもあるヘロインやコカインなどと同じくらい難しいといわれています。
・ニコチン
アルカロイドの一種で、神経毒性の強い猛毒です。化学物質としては猛毒に指定されています。
○妊娠中の喫煙による胎児・子どもへの影響
喫煙は母体への影響だけでなく、胎児の発育に対する悪影響が懸念されます。喫煙している妊婦さんから生まれた赤ちゃんは、喫煙していない妊婦さんから生まれた赤ちゃんに比べて低出生体重児となるリスクが約2倍高くなっています。
さらに、喫煙している妊婦さんは喫煙していない妊婦さんに比べて、早産・自然流産、周産期死亡(妊娠28週以降の死産と、生後1週間以内の早期新生児死亡)の危険性が高くなっています。
妊娠中の喫煙が胎児に及ぼす危険度は、厚生労働省の研究では、低出生体重児2.4倍、早産3.3倍という報告があります。
そのほかに、先天性口唇・口蓋裂は妊婦さんが喫煙をしていた場合、胎児は口唇・口蓋裂になりやすくなります。非喫煙者と比べた場合、約1.2倍口唇・口蓋裂になる確率が高くなります。
乳幼児突然死症候群(SIDS)は、元気な乳幼児が主に睡眠時に突然亡くなることであり、たばこやうつぶせ寝などが原因とされています。また、子宮外妊娠や妊娠中の異常(前置胎盤、胎盤早期剥離等)などの影響もあります。
受動喫煙の妊婦さんも胎児や子どもへの影響を及ぼすリスクは高いです。気管支喘息などの呼吸器疾患や中耳疾患、小児がん、注意欠陥多動性障害(ADHD:精神年齢に比べて、不適当な注意力障害、衝動性、多動性を示す行動障害)、歯周病、う蝕(虫歯)、歯肉のメラニン色素沈着などのリスクが高まります。
○まとめ
これらのことから、喫煙をすることにより虫歯や歯周病などの口腔疾患だけでなく、がんや循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患などの全身疾患にも大きく影響を及ぼしてしまいます。
また、喫煙を始めた年齢や喫煙本数、喫煙年数など喫煙量によって病気の発症リスクが高くなります。直ちに禁煙をすることで、予防することができ治療効果が上がります。そして、受動喫煙による被害が出ないためにも喫煙者は禁煙をしましょう。
しかし、喫煙者はニコチン依存によってなかなか禁煙ができない方は、自分1人で抱え込まず、医療機関などに相談してみましょう。
金属アレルギーでも歯列矯正はできる?
こんにちは。
神戸市垂水区にある矯正歯科専門医院のふじよし矯正歯科クリニックです。
いつも当院のコラムをご覧いただきありがとうございます。
今回は、「金属アレルギーを持っている方でも歯列矯正治療は出来るのか」というテーマについてお話していこうと思います。
当院に歯ならびのご相談に来られる患者様から、
「金属アレルギーですが、矯正治療をすることは可能でしょうか?」
「金属アレルギーでも出来る矯正装置はありますか?」
「歯ならびをきれいにしたいと思っているが、金属アレルギーがあるので不安で…」
という質問をされることがあります。金属アレルギーをお持ちだと、歯列矯正をすることは難しいのではないかという印象をされがちですが、現代は医療技術が発展し、金属を使用していない矯正装置もあります。そのため、金属アレルギーをお持ちの方でも安心して、歯列矯正治療を受けていただくことができます。
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1.金属アレルギーの原因となる物質について
金属アレルギーを引き起こしてしまう代表的な原因となる物質には、「ニッケル」「クロム」「コバルト」「パラジウム」「銀」「銅」「すず」が挙げられます。
ワイヤー矯正を行う場合、歯に装置(ブラケット)とワイヤーを使用して治療を行います。この装置(ブラケット)とワイヤーには、ニッケルやクロム、コバルトの金属が使用されています。特にニッケルは、装置(ブラケット)やワイヤーにもよく用いられているので注意が必要です。どの物質で金属アレルギーが起こるのかは個人差がありますので、金属アレルギーが疑われる場合は皮膚科でパッチテストを行うなどして、何の金属にアレルギー反応が起こるのかを把握しておくと良いでしょう。先天的に金属アレルギーでない場合でも、後天的に金属アレルギーの症状が現れる場合もあります。
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2.金属アレルギーの症状について
金属アレルギーは、「遅延型アレルギー」と呼ばれています。
このアレルギーは、遅延型なので24時間から72時間後に症状が現れることが多いです。具体的な症状としては、「口内炎」「かゆみ」「赤み」「唇の腫れ」「湿疹」などが挙げられます。まれにひどい場合だと、意識障害になる可能性があります。
金属アレルギーの症状には「接触性皮膚炎」「全身性接触皮膚炎」の2種類があります。
「接触性皮膚炎」は、金属が皮膚に触れている部分が赤くなったり、かゆみが出てきたりします。このような症状が起こるのは、汗などにより金属が溶けてしまい、イオン化することで起こります。
「全身性接触皮膚炎」は、むし歯治療で使われている被せ物や詰め物などのお口の中の金属類が、つばで溶けてイオン化し、体の中に入ることで全身に症状が出てしまいます。
多くの方は、「接触性皮膚炎」の症状のことが多く、「全身性接触皮膚炎」の方は少ないです。お口の中に銀歯などの金属が入っている場合、特に問題なく過ごせているのであれば、お口の中に金属が入っていてもアレルギー反応はないということになるので、歯列矯正治療も問題なく行うことができるでしょう。
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3.金属アレルギーの検査方法について
金属アレルギーの検査は大きく分けて2種類あります。
1つ目は、「パッチテスト」という検査方法です。
パッチテストとは、金属試薬を含んだパッチを2日間(48時間)背中や腕の表面皮膚の直接貼り付けます。そして、アレルギー反応が起こるかを調べます。
パッチテストでは数種類の金属を検索するので、歯科でよく使われている金属(ニッケル、クロム、コバルトなど)もアレルギー反応を起こすのか調べることができます。このパッチテストを行っている間、入浴や運動は行うことが出来ません。
2つ目は、「血液検査」です。
血液検査では、採血を行います。簡単に説明しますと、採取した血液に金属のイオンを加え、アレルギー反応が起こるかを調べます。
血液検査の場合、自分の身体にアレルギー反応が起こらずに済むというメリットがあります。
どちらも金属アレルギーの検査は、結果が出るまで時間がかかってしまうでしょう。そのため、金属アレルギーが疑われる方は早めに検査を受けることをおすすめします。
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4.金属アレルギーの方におすすめの矯正装置について
ワイヤー矯正の場合だと、セラミック製の装置(ブラケット)とチタン製のワイヤーを使用することでワイヤー矯正治療を行うことができます。
チタンは、金属の中でもアレルギーを引き起こしにくい素材になります。
ワイヤー矯正以外だとマウスピース型矯正があります。ですが、マウスピース型矯正は全ての歯ならびに適応しているわけではありません。
自分の歯ならびに適応しているかきになる方は一度、矯正歯科で検査を受けてみると良いでしょう。
マウスピース型矯正とワイヤー矯正では治療計画も異なるため、装置を選ぶ時は先生と相談を行うなどして、慎重に選択しましょう。
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5.まとめ
金属アレルギーの方でも安心して歯科矯正治療を受けていただくことができる矯正装置があるということをお分かりいただけましたか。
金属アレルギーの方で、歯科矯正治療を不安に感じている方は、一度矯正専門の歯科医院で相談してみるのも良いでしょう。
何の金属がアレルギーなのか分からないという方は、まず金属アレルギーの検査を行ってから矯正専門の歯科医院へ歯ならびのご相談に行かれるのもいいかと思います。
また、歯列矯正治療中に金属アレルギーの症状を発症した場合は、なるべく早めに担当の歯科医師に相談しましょう。
電動歯ブラシの特徴とメリットデメリット
こんにちは。神戸市垂水区にある歯医者の「ふじよし矯正歯科クリニック」です。
今回は、普通の歯ブラシと電動歯ブラシの違いや、メリットやデメリットについてお話していきます。
皆さんは、毎日の歯磨きでは、どっちの歯ブラシをお使いですか?最近は、色んなメーカーから電動の歯ブラシが出ています。毛先が回転するものや、先端を目的別に交換できるようなタイプなど、家電量販店にもたくさん並んでいます。最近では、子供用の小さめの電動歯ブラシもあります。電動では無い普通の歯ブラシにも色んな種類があります。「やわらかめ・ふつう・かため」や「歯槽膿漏用」などありますね。普通の歯ブラシと電動の歯ブラシ、どっちがいいのか?どう違うのか?と思われたことはないでしょうか。ご自身の好みもあると思いますが、基本的には、磨きやすいほうを使っていただければいいと思います。ただ、怪我や病気などで利き手が不自由な場合は、電動歯ブラシのほうが使いやすいかもしれません。どちらにも使い方やメリットデメリットがありますので、お話していきます。
電動歯ブラシの特徴
電動の歯ブラシとは、ブラシ(毛先)の部分が高速に回転や振動し、歯垢を除去する歯ブラシです。替えのブラシの種類が多いものもあり、着色を除去できたりするものや舌を磨けるブラシもあります。最新の機種では、ブラシの回転をレベルで調整できたりもしますし、専用のアプリと連動してスマートフォンで磨き残しを確認でき、センサーがついていて、電動歯ブラシ特有の毛先を歯に強く押し付けてしまうのを防ぐ機能や、ブラシの交換時期まで本体が教えてくれるようです。電動歯ブラシについて調べてみると、すごく進化していてびっくりしました。怖くてお値段は見ていないですが…。
電動歯ブラシの種類
電動の歯ブラシには種類があり、ブラシ部分が「回転式」と「振動式」と「音波式」と「超音波式」とあります。それぞれの特徴を説明します。
・回転式
回転式のブラシには独特の特徴があり、ブラシの部分が丸くなっています。丸い形をしたブラシが高速回転をして歯を磨くため歯垢をとることに優れています。
・振動式
振動式は、ブラシの部分が細かく振動して歯を磨く電動の歯ブラシです。回転式よりもブラシの動きが激しくないため優しい力で歯磨きができます。
・音波式
音波式は、音波振動でブラシを振動させています。ブラシ部分に音波の振動が発生します。およそ1分間に3万~5万回ヘッドの部分が振動します。その音波振動で発生する水流と細かい泡で歯を磨きます。
・超音波式
超音波式は、音波式よりも早い速度でブラシ部分の音波が振動します。およそ1分間に100万~150万回ヘッドの部分が振動します。超音波の効果では、歯から歯垢(プラーク)除去をする効果があります。
電動歯ブラシのメリットとデメリットについて
電動歯ブラシは、ヘッドのブラシの部分が回転や振動する動きをするので、普通のハブラシと違い、短い時間の歯磨きで歯垢(プラーク)を除去できます。正しくお使いいただければ口腔内の清掃にはとても優れているのが電動歯ブラシです。ただ、電動ならではのメリットやデメリットもあります。
電動歯ブラシのメリット
- 歯垢(プラーク)の除去率が良い
電動歯ブラシは、ヘッドのブラシ部分が高速で回転・振動や音波を発生させるため、普通の歯ブラシで歯を磨くよりも、歯を一本一本丁寧に磨けるため歯垢(プラーク)の除去率が良いです。また、普通のハブラシでは届かない歯周ポケットの中まで回転や振動でブラシの毛先が届くので、歯周病の予防にも効果があります。
- 短時間で効率的に磨ける
毎日の歯磨きにどれ位の時間をかけていますか?一般的に多いのは2分~3分ぐらいのようです。電動歯ブラシだと電源を入れて切れるまで歯を磨く習慣がつきます。メーカーにもよりますが、30秒ごとに持ち手部分が振動または音でお知らせしてくれ、上下と左右の歯、それぞれ30秒の計2分が電動歯ブラシの歯磨きの時間になります。スマホを見ながらダラダラ磨きにならずに短時間で効果的に歯を磨くことができます。
- ブラッシングの技術がいらない
電動歯ブラシは、電源をいれるだけでヘッドのブラシの部分が回転や振動をし、歯に軽く押し当てるだけで歯磨きができます。普通の歯ブラシでのブラッシングだと、奥歯や下の前歯の裏側など、歯ブラシの向きを変える必要がありますが、電動歯ブラシだと、歯に沿ってゆっくり移動させるだけで歯磨きができます。
電動歯ブラシのデメリット
- 価格が高い
普通の歯ブラシだと1本数百円ぐらいで、コンビニでも買うことができますが、電動ハブラシは、数千円~数万円など高価なものになります。また、定期的に交換をする替えのブラシも普通の歯ブラシよりも値段が高いうえ、何種類か替えブラシがあるものもあります。歯ブラシは消耗品なため、ある程度の値段(コスト)がかかってしまいます。また、電化製品になりますので、故障することもあります。すぐに買いに行けないとこもデメリットになるかもしれません。
- 充電や電池が必要
メーカーによって異なりますが、乾電池で使用するものや、充電式ですとコードがついておりコンセントから充電する必要があります。私も一時期、電動歯ブラシを使用していましたが、このコードが洗面所ですごく邪魔で、浮かす収納が出来なかったので電動歯ブラシを使うのを止めてしまった経緯があります…。
- 歯や歯茎を傷めてしまう
電動歯ブラシを使用する際の一番のデメリットになってしまうのが、使い方や磨き方を間違えたまま(力を入れて磨いてしまう)で毎日使用してしまうことで、歯の摩耗・歯肉退縮・歯のエナメル質が傷つくことによって知覚過敏などがなることがあるので、電動歯ブラシを使う際は、普通の歯ブラシと同じような感覚で磨かないような注意が必要です。
電動歯ブラシを使用する際の注意点
電動歯ブラシを使用する際は、研磨剤の入っていない歯磨き粉をお使いください。研磨剤が入っていると、電動で高速回転や振動し歯を磨く電動歯ブラシだと歯が摩擦などで歯の表面が傷ついてしまいます。また、普通の歯磨き粉に多くふくまれている発泡剤(泡立つ機能)が入っていないものをお選びください。発泡剤が含まれていると普通の歯ブラシで磨くときよりも電動歯ブラシだとお口の中が泡だらけになってしまうため、磨き残しが多くなってしまいます。電動歯ブラシの場合は、ジェル状になっていて泡だちのない歯磨き粉がおすすめです。また、発泡剤が含まれていない最初から泡ででてくる歯磨き粉もおすすめです。電動歯ブラシでも普通の歯ブラシでも、共通しているのは、「歯と歯の間(歯間)は磨けない」です。必ず歯間ブラシやフロスを一緒に使うようにしてください。
まとめ
今回は、電動歯ブラシについてお話させていただきました。電動歯ブラシは家電量販店などで販売されており、各メーカーから色々なタイプが発売されています。ゆえに、選び方が大変難しいので、購入をお考えの方は、購入されるまえにかかりつけの歯科医院でご相談されてからのほうが良いと思います。年齢やお口の中の状態によっては、逆効果になってしまうタイプの電動ハブラシもあります。また、お子様などは正しい歯の磨き方を知らないままで電動歯ブラシに慣れてしまうと、磨き残しの影響で虫歯のリスクが高くなってしまうので注意が必要です。大人も子供も、ご自身にあった歯ブラシや電動歯ブラシをお選びいただくと、お口の中の環境が良くなります。
喫煙による矯正治療の影響
○ 歯の動きが遅くなる
矯正治療は、骨の吸収と形成が行われる骨代謝によって歯が動きます。骨代謝が行われる際には、骨を吸収する破骨細胞と新しい骨をつくる骨芽細胞が出現します。歯に矯正力が加わると、歯根膜に圧迫側と牽引側が生じます。圧迫側では骨吸収、牽引側では骨形成が生じて歯の移動が起こります。
しかし、たばこに含まれるニコチンなどの影響で血流や代謝が悪くなることで、破骨細胞(はこつさいぼう)や骨芽細胞(こつがさいぼう)が減少し、骨吸収や骨形成に遅れが生じてしまいます。それによって、歯の移動がスムーズに行われず、矯正治療の期間が長くなる原因にもつながります。
○ 口臭
たばこの煙の中の成分にニコチンとタールが含まれており、口腔内や舌を乾燥させ、唾液分泌量が低下することで細菌が繁殖しやすくなります。また、矯正治療中はブラケットやワイヤーなどの装置が歯に装着されているため、プラーク(歯垢)や歯石、食べかすが溜まりやすい状態になります。それにより強い口臭が発生するリスクが高くなります。
○ 歯周病のリスクが高まる
たばこはニコチンの血管収縮作用があるため、歯周病の特徴でもある歯肉の腫れや出血などの症状が出にくく、発見に遅れることがあります。この状態が続くと歯周病が進行し、歯を支える骨(歯槽骨)が溶けだし、歯が動揺し、歯を失うリスクが高まります。矯正は歯の周囲に炎症を起こすため、すでに歯周病となっている場合、さらに歯周組織の炎症範囲が広がり、歯周病をより進行する可能性があります。歯周病になると歯並びが悪くなることもあります。
○ 歯や矯正装置に着色がついてしまう
たばこを吸うと、たばこの煙に含まれるタール(ヤニ)という発がん性物質が歯に着色するため、歯の表面全体に着色がつきます。特に歯の裏側は黒ずみやすいです。そして、矯正装置にも着色がついてしまいます。喫煙による着色は、歯ブラシではなかなか落とすことができないので、歯科医院でのクリーニングが必要になります。しかし、矯正装置の着色はクリーニングをしても簡単に取り除くことが難しくなってきます。ワイヤー矯正ではブラケットが歯に直接つけているので、1回1回クリーニングのために外すことはできません。目立ちにくい白ワイヤーやクリアブラケットなども変色し
やすくなり、見た目が気になりやすくなってしまいます。また、ワイヤー矯正の方はワイヤーやブラケットという装置がついているため、歯磨きがとても磨きにくく、ブラケット周りにプラーク(歯垢)や歯石が溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まってしまいます。
マウスピース矯正でもマウスピース自体にヤニがつき変色することがあります。マウスピース矯正は目立たない、装置を外せることができることがメリットです。しかし、新しいマウスピースに交換するまでは、たばこで黄ばんだマウスピースを使用し続けないといけないため、マウスピースが黄ばんで目立ちやすくなって審美的にも悪くなってしまいます。カレーやコーヒー、紅茶などでも着色はつきますが、たばこが1番とれにくく残りやすいです。クリーニングで着色を除去してもらっても、また着色がつくのでその繰り返しになってしまいます。
○ アンカースクリューが脱離しやすくなる
アンカースクリューとは、小さなチタン製のネジを歯肉の上から歯槽骨や顎の骨に植立し、それを固定源として使用し歯を動かしていきます。このアンカースクリューは外科処置に分類され、「矯正用インプラント」とも呼ばれています。そのため、処置後に喫煙をすると、歯周組織の再生が妨げられて、固定されず不安定な状態になりやすくなり、アンカースクリューが脱離する可能性が高くなります。
また局所の血行不良による影響で、アンカースクリューが脱落してしまう可能性があります。歯を支える骨の代謝を悪くするため、アンカースクリューが脱落してしまうトラブルが起こりやすくなります。
○ 抜歯後の合併のリスク
矯正治療で行われる外科手術の1つに抜歯があります。これは歯を並べるスペースを確保するために行われる処置です。抜歯直後は血行の流れが良くなっており、歯が動きやすい状態になっています。しかし喫煙者の場合、たばこは傷の治癒能力を遅らせるため、抜歯後の回復を妨げる可能性があります。また抜歯後に喫煙を続けると、「ドライソケット」と呼ばれる症状を引き起こすリスクもあります。
・ ドライソケット
ドライソケットとは、歯を抜いた傷跡が血餅(けっぺい)で塞がれず、骨が露出した状態のことをいいます。抜歯窩治癒不全(ばっしかちゆふぜん)ともいわれています。通常、抜歯直後はかさぶたのような血餅が形成されて自然治癒します。しかし、喫煙によって血餅の形成が妨げられ骨が露出したままになると、骨面は乾燥し感染しやすくなります。冷水による刺激痛や食物による接触痛、強度の持続性疼痛などの強い痛みを伴うことがあり、症状が進行すると首のリンパ節や顎骨の骨膜まで細菌感染が広がる可能性もあります。そして、ニコチンの作用で毛細血管が収縮してしまうと、抜歯後に処方される痛み止めや化膿止めなどの薬の効果が出にくくなる可能性があり、体の細部まで薬がいきわたりにくくなります。痛みが続く場合は、かかりつけの歯科医院へ受診してください。
(ドライソケットになる原因)
歯を抜いた場所は、血餅によって覆われます。血餅は血液がゼリー状に固まったもので、かさぶたと同じ役割があります。血餅が抜歯した場所に塞がれば、ドライソケットにはなりません。しかし、何らかの原因で血餅が形成されなかったり、外れてしまったりすることがあります。
◦血餅が形成されなくなる原因
・ 抜歯後の飲酒や入浴
・ 抜歯後の激しい運動
・ 経口避妊薬の服用
・ 血液凝固阻害薬(抗凝固薬、抗血小板薬)の服用
・ 抜歯前後の喫煙
◦血餅が外れる原因
・ 強いうがいや過度なうがい
・ 傷口を指や舌で触る
・ 歯ブラシで傷口を刺激する
このように喫煙は、矯正治療を行うにあたってメリットはひとつもありません。矯正治療中でも喫煙を続けると、治療計画通りに進みにくくなり、治療期間が延びる原因にもつながる可能性があります。また、口腔内だけでなく、全身への影響も大きく関与しており、生活の質(QOL)を向上させるためにも禁煙はとても重要です。
副鼻腔炎と歯痛について
副鼻腔炎(蓄膿症)にかかったことがある方で、「歯が痛い」という経験をしたことがあるという方がおられるかと思います。
または、副鼻腔炎にかかると『歯が痛くなった』という話を耳にしたことはありませんか。
実は、副鼻腔炎を発症した7割の患者さんが歯の痛みを感じたという報告があります。このようなことから、副鼻腔炎(蓄膿症)が原因で歯が痛くなることは、よくある症状だといえます。
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副鼻腔炎(蓄膿症)による歯の痛みについて
・ 原因
副鼻腔炎には、上顎洞といわれる空洞があります。この上顎洞には、歯の神経が近くに通っていたり、歯が近くにあります。
そのため、副鼻腔炎(蓄膿症)の炎症が歯の神経や奥歯の根元の辺りに影響を及ぼす可能性が高く、歯の神経や歯に炎症が伝わるとむし歯では無いのに、歯に痛みを感じることがあります。
副鼻腔炎(蓄膿症)の症状が見られる患者さんの7割の方が歯の痛みを訴えたという報告も出ています。
つまり、これらのことから、副鼻腔炎で歯が痛くなることは珍しいことではないということが分かります。
・ 特徴
副鼻腔炎(蓄膿症)が原因となり、歯が痛くなるという症状には6つの特徴があります。
① 上の奥歯が痛くなる
上の奥歯の根元はとても副鼻腔炎に近い位置にあります。個人差はありますが、人によっては副鼻腔(上顎洞)の中に奥歯の根元が入り込んでいる場合もあります。それくらい近い位置にあります。そのため、副鼻腔炎による炎症が歯の根元から歯に伝わって、上の奥歯が痛くなるということが起こります。
② 複数の歯が痛くなる
むし歯の場合、一般的にはむし歯になった歯のみに痛みを感じます。
しかし、副鼻腔炎(蓄膿症)の場合は副鼻腔の近くにある歯の根元辺りの炎症がある範囲に痛みを感じます。炎症の範囲が広ければ広いほど、複数の歯に痛みが生じます。複数の歯が痛くなるという症状は珍しいというわけではありません。
③ 何もしていなくても歯が痛くなる
副鼻腔炎(蓄膿症)の炎症がひどくなってくると、食事の際に食べ物を噛んでいる時や歯を喰いしばっている時以外にも歯に痛みを感じます。
副鼻腔炎の炎症が大きければ大きい程、何もしていない時も強い痛みを感じる傾向があります。
④ 下を向くと痛みを感じる
下を向いた時、副鼻腔炎の中に溜まっている膿の場所が変わるので、副鼻腔内の圧力に変化が生じます。
一般的には下を向くことで、頭・歯・顔の神経が圧迫される傾向があるため、そのような影響で歯が痛むということになります。
⑤ 左右のどちらかの歯が痛くなる
一般的な副鼻腔炎(蓄膿症)の症状は、左右両方の副鼻腔に起こりますが、歯に痛みが出るのは片方だけ痛むことが多いと言われています。
急性副鼻腔炎(蓄膿症)の方は特に、片方の歯だけが痛むという症状が多いようです。症状には個人差がありますので、まれに両方の歯が痛むこともあります。
⑥ 痛くなる歯と痛くならない歯がある
一度治療をしたことがある歯と比べると、治療をしたことがない歯の方が痛みを感じる可能性が高くなります。歯の神経を抜いく治療(抜髄ばつずい)をしたことがある歯は、ほとんど痛みを感じない可能性があります。
そのため、副鼻腔炎(蓄膿症)になっても痛みを感じる歯と痛みを感じない歯があります。
・ 痛みがいつまで続くのか
副鼻腔炎(蓄膿症)で歯が痛くなった時は、副鼻腔炎(蓄膿症)の症状が治るまで痛みが続きます。あるいは、歯や歯の周囲の炎症が治るまでと言われています。早めに適切な治療を行わなければ、複数の歯の周囲の神経に炎症が広がってしまい、複数の歯が痛くなったりする可能性があります。
副鼻腔炎(蓄膿症)が慢性化してしまうと、繰り返して歯が痛くなってしまう場合があります。
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副鼻腔炎で歯が痛いときの対処法
・ 速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう
歯に痛みを感じるほど副鼻腔炎(蓄膿症)の炎症がひどくなってきた場合は、なるべく早めに耳鼻咽喉科を受診することをおすすめします。
早めに治療や診断を行うことで、副鼻腔炎(蓄膿症)の炎症を抑え、歯の痛みを軽減することが可能になります。副鼻腔炎(蓄膿症)で歯が痛いときは、早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
・ 保冷剤などで冷やす
もし、すぐに耳鼻咽喉科に行くことができないという方は、少しでも症状を軽減するために「冷やす」ということをおすすめします。
頬のあたりを冷やすことで、副鼻腔炎の症状を一時的に和らげる効果が期待できます。試しに行ってみてはいかがでしょうか。長時間冷やしたままだと、凍傷になってしまう恐れがあるので気をつけてください。
ですが、この方法はあくまで耳鼻咽喉科をすぐに受診することが難しいという方への対処法であり、副鼻腔炎(蓄膿症)の症状が治るわけではありません。なので、早めに耳鼻咽喉科で治療を受けましょう。
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まとめ
副鼻腔炎(蓄膿症)と歯の痛みについての関係をお分かりいただけましたか。
もし、副鼻腔炎(蓄膿症)が発症したという方はなるべく早めに耳鼻咽喉科を受診しましょう。