コラム

2024.04.10

歯の接触癖(TCH)について

今回は、歯の接触癖(TCH)についてお話します。TCHとは(Tooth Contacting Habit)の略です。上と下の歯が接触するのは、話すときと飲食のときのみなのを皆さんはご存知でしょうか?日常生活をおくっているなかで、無意識に上と下の歯を接触させてしまっている方は、接触癖(TCH)があります。接触癖(TCH)は、寝ているときにおこなっている歯ぎしりや日中の食いしばりとは違います。

普段の日常生活の中で、例えば、スマホやテレビを見ているときや、ゲームや勉強をしているとき、話さずに飲食をしていないときに歯が接触しているかどうかです。接触癖(TCH)は、歯列矯正治療を長引かす原因になります。当院では、接触癖があると、矯正装置がとれやすくなるため、ワイヤーで矯正治療の方へは、装置装着の時に注意事項として接触癖(TCH)に関する用紙をお渡ししております。

TCH 歯の接触癖について(当院でお渡ししている用紙の内容)

日常生活の中で、上下の歯を接触させていないか自分で注意してみてください。

噛みしめやくいしばりを意識していなくても、日常的な歯の接触は歯や顎に非常に大きな負担をかけます。

1、本来、人間の上下の歯が接触するのは、物を噛む時と飲みこむ時だけだという事を覚えておいてください。食事やつばを飲み込むなどの時に瞬間的に接触するのみです。

2、もし頻繁に歯を接触させていると、歯は摩耗(まもう)し続け、あちこちにしみる感じが出たり、歯がひび割れてしまい、時には歯が壊れてしまう事さえあります。お口の周りの筋肉や関節が破壊され続け、なかなか治らないという結果になる事もあります。歯の移動が遅くなり、矯正治療が長引いてしまいます。

3、この様な癖がありましたら、ただちに止めるように注意してください。一般的には、自覚が無い場合が多いので、この機会に次のような症状がないか意識してみてください。

  • ・日中、無意識に奥歯や前歯が接触していませんか。軽く接触していても悪い影響があります
  • ・唇を合わせた状態で上下の歯が接触していませんか。
  • ・起床時に顎が疲れたような感覚がありませんか。首筋や肩が凝っていませんか。
  • ・片頭痛がよく起こりませんか。
  • ・仕事などに夢中になっている時、ふと気づくとしっかり噛みしめていたり、舌を上あごに吸いつけていたりすることがありませんか。
  • ・顎が開かなくなったり、開けるときに痛みを感じた経験がありませんか。
  • ・硬い食べ物をよく食べませんか。
  • ・頬の周りの筋肉が固くて、いつも緊張している気がしませんか。
  • ・お豆腐のような柔らかい食べ物でも強く噛んでいませんか。
  • ・硬い食べ物が歯に良いと思いこんでいませんか。
  • ・ガムやスルメ、昆布などをいつも噛んでいませんか。
  • ・早食いではないですか、頬張って食べる癖はありませんか。

4、上下歯列接触癖(TCH)、噛みしめや歯ぎしりの習慣を止めるもっとも効果的な方法は、唇を閉じて歯を離す感覚を覚えることです。「唇を閉じて、上下の歯を離し、力を抜く」ことを意識してみてください。このことを一日に何度も練習してください。

5、この簡単な方法で、顎の関節とお口回りの筋肉は非常にリラックスし、緊張やこわばりから解放されます。また、知覚過敏が軽減し、歯の寿命も格段に伸びるということが報告されています

(参考文献 日本歯科医師会雑誌 Vol.63 No.3 2010-6

接触癖(TCH)のリスクについて

①矯正の装置がとれやすくなる

矯正治療中は、歯の並びや噛み合わせを治すために、お口の中に様々な装置が付きます。装置がついている状態で常に上と下の歯を接触させてしまう癖があると、矯正の装置がとれやすくなってしまいます。

②矯正治療中の歯の動きが遅くなる

歯の並びや噛み合わせを治療する矯正治療では、歯の根っこを少しずつ動かして歯並びを治療していきます。歯を動かして治療をしていくなかで、接触癖があると、歯の動きを妨げられることがあり、歯の動きが遅くなってしまいます。歯の動きが遅くなると、治療期間も長くなってしまいますのでご注意ください。

③奥歯がすり減る

歯は、前歯も奥歯も歯の先端はキザキザのような形をしています。キザキザして山のような形をしているのが、本来の歯の形ですが、接触癖があると、歯と歯が強く擦れてあたっているのでキザキザがなくなってしまい、結果、歯がすり減ってしまいます。接触癖だけではなく、硬い食べ物を好んで食べている方や、氷を噛んでしまう癖があると、同じように歯がすり減ってしまいますので、意識して癖がなくなるようにしていきましょう。

④知覚過敏になりやすくなる

歯の表面はエナメル質に覆われています。エナメル質は、人の体の中で一番硬い組織なのです。硬いエナメル質に覆われていることで、熱いものや冷たいもの、硬い食べ物にも耐えられようになっています。接触癖があると、上と下の歯が過剰にあたっていることで、エナメル質がはがれてしまいます。エナメル質がはがれると、エナメル質の下にある象牙質(ぞうげしつ)がでてしまい、象牙質が刺激されると、神経に伝わるため、歯を磨いたり、熱いもの、冷たいものが象牙質にふれることによって知覚過敏になってしまいます。

⑤顎関節症になってしまう

顎関節症というと、歯ぎしりが原因だと思う方が多いと思いますが、接触癖も原因の一つになります。上と下の歯が必要以上にあたっていると、顎の関節にも大きな負担になります。顎関節症になると、顎が痛い、口が開け辛いなどの症状があり、日常生活にも大きな影響がでてきます。顎関節症は、特に10代~30代の女性が発症しやすい傾向があります。矯正治療中に、顎が痛い・音が鳴る・口が開け辛いなど気になることがありましたら、お早めに先生もしくはスタッフにお知らせください。顎関節症を発症した場合、矯正治療よりも、顎関節症の治療を優先する場合があります。

⑥肩こりや頭痛を併発する

歯の接触癖があると、顎の筋肉に負担がかかるため、顎の筋肉に近い首や肩まわりの筋肉にも影響がでます。悪化すると、肩こりや頭痛を併発することがあります。

接触癖(TCH)は、無意識なときにあらわれる癖なので、治すには意識的にする必要があります。矯正治療のためだけではなく、健康な歯の寿命を長くするためにも接触癖に気をつけていきましょう。

気になることがありましたら、いつでも当院の先生やスタッフにご相談ください。