コラム

2024.02.15

歯列矯正治療に伴うリスクについて

今回は、歯並びや噛み合わせを治療する歯列矯正治療をする時に伴うリスクについてお話します。

ご自身やお子様の歯が気になったりしませんか?

例えば、歯の並びがガタガタしている・前歯が出ている・受け口・学校の歯科健診で指摘された・よく口の中を噛んでしまうなどを治療し、整った歯並びと正しい位置での噛み合わせにするように治療するのが歯列矯正治療です。もちろん治療には、メリットとデメリットもありますが、歯列矯正治療に伴うリスクもあります。歯並びが気になっていて矯正の治療をお考えの方も多いかと思いますが、リスクに対しても理解をしてから治療を行っていただくと良いと思います。

歯列矯正治療にはどんなリスクがあるのかそれぞれ説明させていただきます。

①痛みがある

歯列矯正治療は、お口の中に様々な装置をつけて歯を動かして治療していきます。症状や治療の内容によって装置は異なりますが、装置をつけていることによって感じる痛みと、歯が動いている時に感じる痛みがあります。一番多く聞かれる質問も「痛いですか?」です。矯正の治療の痛みは、歯が動いている時に感じる痛みが主ですが、毎日痛い訳ではなく、装置をつけた後や、ワイヤーを交換した時、アライナーを交換した時のあと、2~3日歯が痛みます。前歯でガブっと硬い物を食べづらくなります。痛みがあるときは、ぬるま湯にお塩を一つまみいれていただき口に含んでいただくと温湿布のような効果があり、少し痛みが和らぐことがあります。また、矯正装置が歯肉や粘膜にあたってその部分が口内炎になり痛みがでることがあります。お渡ししているワックスを使っていただくと痛みが楽になります。

②抜歯をすることがある


歯並びや噛み合わせを治療する歯列矯正治療では、より良い結果の治療をするための抜歯をすることがあります。親知らず・健全な歯を抜く、またはエナメル質の範囲内で歯を削ることがあります。当院では、親知らずの抜歯は、総合病院の口腔外科に、その他の抜歯は、かかりつけの一般歯科医院にご紹介させていただいています。ご希望の医院がありましたらスタッフにお声がけください。

③治療を中止することもある

当院は通報通りに矯正の処置を行っておりますが、その処置中に泣いてしまって治療が出来ない・装置の不快感や違和感による不満や痛みによって装置を外してしまう・装置をつけたことによっておこる各種アレルギー・治療をしていくなかでコミュニケーションがとれず困難な場合・患者様の経済的理由などで、当院の治療や処置方法が受け入れられない場合には、治療を中止することがあります。

④虫歯や歯周病になりやすくなる

矯正の装置をお口の中つけることによって、虫歯や歯周病になりやすくなります。これは、装置がつくことで歯磨きがしづらくなり磨き残しが原因なこと多いため、矯正の装置がお口の中についたら、今まで以上で丁寧な歯磨きが必須になります。虫歯になっていないか・歯周病が悪化しないためにも、定期的にかかりつけの一般歯科医院を受診していただくようお願いします。また、初期の虫歯でも、矯正の装置をとったあとに、歯に白濁が残ることがあります。虫歯や歯周病の治療は、矯正の治療よりも優先して行っていただきます。虫歯や歯周病の治療中は、矯正の治療を一時中断します。

⑤装置が外れてしまうことがある

矯正の装置が、治療中に外れてしまうことがあります。硬い食べ物を食べてしまって外れてしまう場合と、夜寝ている時の歯ぎしりや食いしばりが原因で外れてしまう場合がほとんどです。装置が外れたままだと、歯を動かす力がかからないため、装置を付け治す必要があります。装置が取れたり・外れてしまったら速やかにご連絡を願いします。また、取れてしまった装置は必ずご持参ください。

⑥歯根吸収を生じることがある

矯正の治療中に、歯根吸収(しこんきゅうしゅう)、歯を動かすさいに歯の根っこが短くなる現象がおこることがあります。歯根吸収は、予測困難で治療中に歯根吸収が判明した場合は、矯正治療を中断することがあります。

⑦歯肉退縮をすることがある

歯肉(歯茎)や歯槽骨(しそうこつ)が、退縮してしまうことがあります。歯肉が退縮すると歯の根っこ(歯根)が歯茎から露出してしまい、冷たい物や熱い物がしみる(知覚過敏)などの症状がでることがあります。一度退縮してしまった歯肉は元には戻らないため、歯磨きのときに強く磨かない・歯ブラシの毛先を柔らかくするなどして、それ以上の退縮を防ぐことが重要です。

⑧ブラックトライアングルになることがある

歯と歯の間に隙間が生じることをブラックトライアングルといいます。成人(特に年配)の方や、歯肉の状態が悪い(歯周病など)と、矯正治療後、ブラックトライアングルができてしまうことが多く、そのような歯と歯の隙間は、回復しづらいと言われています。隙間が気になるなど、矯正とは関係のない治療はかかりつけの一般歯科医院でご相談ください。

⑨その他のリスク

  1. ①ワイヤーで矯正治療をし、歯列矯正治療をおこなった場合、治療が終わりワイヤーとブラケットを除去するさいに、歯のエナメル質にクラックという細かい微小のひびが入ることがあります。普段は気づかないですが、歯が乾燥などで乾くと見えることがあります。
  2. ②歯の根っこの治療(根管治療)を受けている歯は、矯正の治療中に悪化したりし、化膿することがあります。再根管治療が必要な場合は、矯正の治療を一時中断をして、かかりつけの一般歯科医院で治療をしていただくことになります。
  3. ③矯正の治療中に、歯の骨性癒着(歯と骨が癒着していたために歯が動かなくなる)が判明することがあります。この骨性癒着は、矯正の治療前に鑑別するのは困難なため、判明した場合は、外科的に複数回の処置が必要になるか、抜歯の可能性もあります。
  4. ④矯正の治療中に、歯髄充血あるいは歯髄壊死がおきることがあります。歯髄充血・歯髄壊死ともに、予測は困難なため、矯正の治療を中断することがあります。根っこの治療(根管治療)が必要になった場合は、かかりつけの一般歯科医院で治療をお願いします。
  5. ⑤患者様、個人の全人状態や顎顔面骨格の形態、歯の大きさなどによっては、歯列矯正治療の限界が異なります。
  6. ⑥受け口などの、著しい骨格性不正咬合の場合は、歯並びや噛み合わせを治療する歯列矯正治療だけでは治療の限界があるため、外科手術を併用することで骨格を改善することが可能になります。
  7. ⑦歯を支える歯槽骨が少ないと、矯正治療中や矯正の治療後に歯の動揺(ぐらつき)が大きくなります。治療は必要な場合は、かかりつけの一般歯科医院で治療をお願いします。

 

今回は、歯並びや噛み合わせを治療する歯列矯正治療を行ううえでの、リスクについてお話しました。少し難しい言葉や不安になるような文章もあったかもしれませんが、あくまでもリスクのお話なので、矯正治療を受ける方全員におこるわけではありません。次回、それぞれのリスクいついてもう少し詳しく話していこうかと思います。矯正の治療に関して不安に思うことや疑問がありましたら、主治医やスタッフにお気軽にご相談ください。