コラム

2024.01.19

マウスピース型矯正装置(インビザライン※)による矯正で行う遠心移動って何?メリットや方法を解説!

こんにちは。神戸市垂水区にある歯医者「ふじよし矯正歯科クリニック」です。

遠心移動の説明

歯列矯正において、歯並びを整えるためには歯を綺麗に並べるスペースが必要です。一般的には、このスペースを確保するために抜歯をすることが多いです。

しかし、健康な歯を抜歯することに対して、抵抗や恐怖を感じる方も多くいます。マウスピース型矯正装置(インビザライン※)で行う遠心移動では、抜歯を行わずに歯を綺麗に並べるためのスペースを確保できます。

この記事では、マウスピース型矯正装置(インビザライン※)による矯正で行う遠心移動のメリットや方法について詳しく解説します。「歯の矯正治療を希望しているけれど抜歯に抵抗がある」と感じている方は、ぜひ参考にしてください。

遠心移動とは?

奥歯をチェックする女性

遠心移動とは、歯を後方へ移動させることを指します。矯正治療では、乱れて生えた歯を綺麗に並べるためのスペースが必要であり、一般的には抜歯が選択されます。

マウスピース型矯正装置(インビザライン※)を使用する矯正方法では、遠心移動が効果的とされています。そのため、遠心移動はマウスピース型矯正装置(インビザライン※)での矯正治療で用いることが多いです。

ただし、必ずしも遠心移動によって歯を綺麗に並べるためのスペースを確保できるわけではありません。遠心移動によって歯を移動させるためには、以下の条件を満たす必要があります。

・奥歯の後方に十分なスペースがある
・顎間ゴムを適切に使用できる

それぞれ詳しく解説します。

奥歯の後方に十分なスペースがある

歯は顎の骨の上に生えているため、奥歯の後方に歯が移動できる十分なスペースがなければ、遠心移動はできません。顎が小さい場合は奥歯の後方に十分なスペースがないことが多いため、遠心移動で歯並びを整えるためのスペースは確保できないでしょう。

顎間ゴムを適切に使用できる

マウスピース型矯正装置(インビザライン※)を用いて遠心移動をする際は、顎間ゴムを使用します。マウスピースに顎間ゴムを取り付けるためのボタンを設け、上下のマウスピースを連結するように顎間ゴムを装着します。

顎間ゴムは1日に20時間以上装着する必要があり、口を大きく開けると切れる可能性があります。そのため、常に予備を携帯しなければなりません。

また、顎間ゴムは毎日新品のゴムに交換する必要があります。マウスピース型矯正装置(インビザライン※)で遠心移動をするためには、顎間ゴムの使用ルールを守ることが求められます。

遠心移動を行うメリット

遠心移動を行うメリットイメージ

遠心移動を行うことで、抜歯が必要な症例であっても、抜歯をせずに治療が可能になります。

歯並びが乱れる主な原因は、顎が小さいために歯が生えるスペースが不足していることです。従来のワイヤー矯正では、歯を綺麗に並べるスペースを確保するために、健康な歯を抜歯するのが一般的でした。

しかし、健康な歯を抜歯することに抵抗や恐怖を感じる患者さんもいます。健康な歯を残しながら歯を動かすためのスペースを作り出し、歯並びを整えられることが、マウスピース型矯正装置(インビザライン※)で遠心移動を行うメリットです。

遠心移動が必要な症例

叢生の人

マウスピース型矯正装置(インビザライン※)を使用して矯正する際に、すべての症例で遠心移動が行えるわけではありません。マウスピース型矯正装置(インビザライン※)での矯正治療において、遠心移動が必要となる可能性が高い症例は、以下の3つです。

・叢生(ガタガタした歯並び)
・上顎前突(出っ歯)
・下顎前突(受け口)

ただし、これらの症例であっても、必ずしもマウスピース型矯正装置(インビザライン※)で遠心移動ができるわけではありません。マウスピース型矯正装置(インビザライン※)での遠心移動が適応となる症例は、一般的には軽度な症例が多いためです。

重度の出っ歯や、歯の重なりが強い症例、骨格に問題がある症例は、遠心移動で歯を綺麗に並べるためのスペースを確保するのが難しいです。抜歯や外科手術が必要になるでしょう。

遠心移動の方法

遠心移動治療を受ける女性

遠心移動では、一番奥の歯から順番に動かしていきます。一番奥の歯から動かし始め、次に奥から二番目の歯という流れで進んでいきます。

前歯を動かせるスペースが確保できたら、前歯を綺麗に整えます。そのため前歯の並びが良くなるのは、治療の中盤以降になります。

さらにマウスピース型矯正装置(インビザライン※)単独の遠心移動の限界は2mm程度といわれています。

日本人は奥歯の後方の骨の奥行きが少なく、遠心移動ができないこともあります。

遠心移動の失敗例

遠心移動の失敗について考える人

遠心移動を行っても、必ずしも計画通りに歯を綺麗に並べるためのスペースを確保できるわけではありません。遠心移動は難しい技術のため、失敗する可能性もあります。

遠心移動の失敗例には、計画通りに歯が奥に移動しなかったり、遠心移動によって噛み合わせが悪化したりすることが挙げられます。これらの失敗には、以下のような原因が挙げられます。

・奥歯の後方の骨の奥行きが足りなかった
・親知らずを抜いていなかった
・顎間ゴムを適切に使用しなかった

歯が移動するための骨が不足している場合や親知らずが存在する場合、遠心移動による歯の移動は難しいです。治療開始前にレントゲンやCTを撮影して、親知らずの有無や遠心移動ができる距離を計測するのが重要です。親知らずが存在する場合は、抜歯する必要があります。

顎の骨のサイズや親知らずが原因で、奥歯の後方にスペースが不足していることもあるでしょう。無理に遠心移動を行っても、歯は奥に移動しません。

このような状態で無理に矯正治療を進めると、逆に前歯が前方に突出したり噛み合わせが悪くなったりする可能性があります。

また、遠心移動を行うための条件として、顎間ゴムを適切に使用できることが挙げられます。顎間ゴムは1日に22時間以上装着する必要があり、患者さん自身で装着しなければなりません。

装着時間が短かったり、装着方法が誤っていたりすると、遠心移動の失敗につながります。遠心移動に失敗した場合、治療をやり直す必要があり、治療期間が伸びます。

どんな治療でも、メリットだけでなくデメリットが存在します。治療前には、メリットだけでなくデメリットについても十分理解することが重要です。

遠心移動でスペースを確保できない場合の対処法

抜歯イメージ

遠心移動を行った結果、歯を綺麗に並べるためのスペースを十分に確保できないこともあります。そのようなケースでは、以下の方法でスペースを確保します。

・抜歯
・IPR(ディスキング)
・側方拡大

これらの対処法について詳しく解説します。

抜歯

抜歯は、歯を綺麗に並べるためのスペースを最も効果的に作り出せる方法です。抜歯をする場合は、前から4番目または5番目の上下の歯、合計4本の歯を抜くことが多いです。

しかし、健康な歯を抜く必要があるため、抵抗や恐怖を感じる方が少なくありません。遠心移動は抜歯をしないで矯正治療ができる方法と前述しましたが、できない場合は抜歯しなければならないケースもあります。

IPR(ディスキング)

IPRは、歯と歯の間を削ることで、歯を綺麗に並べるためのスペースを確保する方法です。削るといっても、虫歯治療のように大きく削るわけではありません。1本あたり0.2~0.5mm程度削ります。

IPR後に見た目が大きく変化することや削った部分がしみることはほとんどありません。

歯を削る量は極わずかですが、複数の歯にIPRをすることで、歯を綺麗に並べるためのスペースを確保できます。IPRで確保できるスペースは遠心移動と同じ程度なので、IPRと遠心移動を併用するなどの工夫が必要です。

側方拡大

側方拡大は、歯列を横に広げることで歯と歯の隙間を増やし、歯を綺麗に並べるためのスペースを確保する方法です。取り外し可能な専用の装置を使用して、歯列を徐々に横に広げます。

ただし、成長期のこどもと比較して、大人は歯列をあまり拡張できません。また、拡張しすぎると顎の骨から歯が飛び出す可能性があるため、治療は慎重に行われます。

まとめ

インビザラインのマウスピース

この記事では、マウスピース型矯正装置(インビザライン※)を使用する矯正における遠心移動について解説しました。遠心移動を行うことで、抜歯をせずに歯を綺麗に並べるためのスペースを確保できます。

しかし、遠心移動にはメリットだけではなくデメリットも存在します。遠心移動が失敗すると治療をやり直す必要があり、最終的には抜歯が必要になるケースもあります。

健康な歯を抜歯したくないという場合は、まずは歯科医師に相談して遠心移動が可能かどうか確認してみましょう。

マウスピース型矯正装置(インビザライン※)での矯正を検討されている方は、神戸市垂水区にある歯医者「ふじよし矯正歯科クリニック」にお気軽にご相談ください。

※完成物薬機法対象外の矯正歯科装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。