コラム

2023.11.17

マウスピース型矯正装置(インビザライン※)で使用するアンカースクリューの役割とは?

こんにちは。神戸市垂水区にある歯医者「ふじよし矯正歯科クリニック」です。

マウスピースを持っている男性

矯正治療では、歯を移動させたい方向に動かすために「アンカースクリュー」というネジを埋め込む処置を行うことがあります。アンカースクリューを歯槽骨に埋め込み、固定源を作ることで、歯を効率的に移動させることができるのです。

マウスピース型矯正装置(インビザライン※)でも、マウスピースだけでは治療が困難な場合にアンカースクリューを使用します。アンカースクリューを使用することで矯正治療の幅が広がるだけでなく、治療期間の短縮や抜歯の回避、患者さんへの負担軽減などさまざまなメリットがあります。

今回は、マウスピース型矯正装置(インビザライン※)で使用するアンカースクリューの役割やメリット・デメリット、埋め込む流れについて解説します。

マウスピース型矯正装置(インビザライン※)のアンカースクリューとは?

クエスチョンマークが書かれた木製のブロック

アンカースクリューとは、医療用の小さなネジのことです。アンカースクリューを歯槽骨に埋め込み、固定源を作ることで、歯を効率的に動かすことができます。アンカースクリューと動かしたい歯にゴムをかけ、ゴムの張力を利用して歯を移動させるのです。

アンカースクリューは直径1~2mm、長さ6~10mm程度と非常に小さいネジで、アレルギーを引き起こしにくいチタンという素材でできています。アンカースクリューの埋入は1本5~10分程度で終了します。

また、局所麻酔を使用するため処置中の痛みはなく、出血や術後の腫れもほとんどありません。

アンカスクリューが必要な症例

2つの歯の模型

アンカースクリューが必要な症例は、以下のとおりです。

出っ歯

出っ歯とは、下の前歯よりも上の前歯が前方へ突出している歯並びです。出っ歯の矯正治療では、前歯を後方に下げるスペースを確保するために抜歯が必要になる場合があります。抜歯したスペースを利用して歯列をうしろに動かしたい場合、アンカースクリューを使用することがあるのです。

受け口

受け口とは、上顎よりも下顎のほうが前方へ突出している歯並びです。アンカースクリューを使用することで下の歯を後方に移動できるため、顎の位置や噛み合わせを改善できます。

叢生(そうせい)

叢生(そうせい)とは、ガタガタしている歯並びのことです。アンカースクリューを固定源に歯列全体を後方へ引っ張ることができるため、歯並びがきれいに整います。

開咬(かいこう)

開咬(かいこう)とは、奥歯で噛んだときに前歯が開いてしまう歯並びです。「オープンバイト」とも呼ばれます。アンカースクリューを使用することで奥歯を歯茎の方向へ押し込むことができるため、前歯の噛み合わせの改善が可能です。

過蓋咬合(かがいこうごう)

過蓋咬合(かがいこうごう)とは、噛み合わせが深い歯並びです。過蓋咬合の改善にもアンカースクリューが用いられます。アンカースクリューを使用することで上の前歯を歯茎の方向に押し込むことができるため、噛み合わせの改善が可能です。

マウスピース型矯正装置(インビザライン※)で使用するアンカースクリューの役割

女性歯科衛生士

マウスピース型矯正装置(インビザライン※)のアンカースクリューの役割は、歯を動かすための固定源になることです。

マウスピース型矯正装置を使用する矯正治療やワイヤー矯正などの矯正装置のみを使用して歯を動かす場合は、歯を固定源にして歯並びを整えます。そのため、動かす必要のない固定源の歯にまで矯正力が加わり、望まない方向に歯が動くことがありました。

一方、アンカースクリューを動くことのない歯槽骨に埋め込むことで、動かしたい歯にだけピンポイントに矯正力を加えることができるのです。

アンカースクリューを使用するメリット

宙に浮くプラスマークを手で支えている

アンカースクリューを使用することで、矯正装置だけを使用した治療では難しい症例にも対応可能になりました。ほかにも、アンカースクリューには治療期間の短縮、患者さんの負担軽減など多くのメリットがあります。アンカースクリューを使用するメリットを詳しくみていきましょう。

マウスピース型矯正装置(インビザライン※)による治療でアンカスクリューを使用するメリットは、以下の4つです。

難しい症例に対応できる

矯正装置を使用した治療にアンカースクリューを使用することで、難しい症例にも対応できるようになります。歯槽骨に埋め込んだアンカースクリューを固定源としてさまざまな方向から矯正力を加えられるため、歯の動きをより確実にコントロールできるのです。

アンカースクリューを使用することで、従来では動かせなかった方向に歯を動かすことや、大きく歯を移動させることもできます。

治療期間を短縮できる可能性がある

アンカースクリューを使用することで治療期間を短縮できる可能性があります。マウスピース矯正やワイヤー矯正などの矯正装置のみを使用した矯正よりも、効率的に歯を動かせるためです。

抜歯せずに矯正治療を行える可能性がある

矯正治療では、歯をきれいに並べるためのスペースが足りない場合、抜歯をしてスペースを確保する必要があります。

一方、アンカースクリューを使用すると奥歯を後方に移動できるため、抜歯をしなくても矯正治療ができる可能性があるのです。

ただし、親知らずがある場合は抜歯が必要になるでしょう。

患者さまの負担を軽減できる

従来の矯正治療では、動かしたくない歯が動くのを防ぐために専用の装置が必要でした。ヘッドギアなどの装置は決められた時間・方法で毎日使用する必要があり、患者さんの協力度によって治療結果が左右されるというデメリットがあります。

一方、アンカースクリューを使用すればヘッドギアなどの装置は必要ありません。歯槽骨に埋入するため、治療への協力度に関わらず治療を進められます。

マウスピース型矯正装置(インビザライン※)でアンカースクリューを使用するデメリット

倒れるドミノを指で押さえている

アンカースクリューはメリットの多い治療法ですが、治療を検討する際はデメリットについても理解しておきましょう。マウスピース型矯正装置(インビザライン※)の治療でアンカースクリューを使用するデメリットは、以下の4つです。

歯根を傷付けることがある

アンカースクリューを埋め込む手術の際に、歯根を傷付ける可能性があります。アンカースクリューは歯根と歯根の間の歯槽骨に埋入しますが、歯根に近い部分に埋入すると歯根を傷付ける可能性があるのです。

ただし、治療前にCT撮影を行い、歯根の位置や形を確認することで、歯根を傷付けるリスクは大幅に軽減できます。

再び埋入が必要になることがある

骨や歯茎の状態、感染などによりアンカースクリューが脱落することがあります。アンカースクリューはインプラントのように骨と結合しないためです。

アンカースクリューが外れた場合は再び埋入する必要があります。また、治療が進むとアンカースクリューが歯の移動の邪魔になることもあるでしょう。アンカースクリューが歯の移動の邪魔になる場合は、別の部分に再び埋入します

細菌感染を起こす可能性がある

アンカースクリューの周囲に汚れがたまると、細菌感染を起こす可能性があります。

感染を防ぐためにはお口のケアをしっかりと行い、清潔に保つことが大切です。アンカースクリューを埋入したあとは、やわらかい歯ブラシやタフトブラシを使用してアンカースクリューの周囲を優しく磨きましょう。

費用が別途かかることがある

アンカースクリューを使用する場合、マウスピース型矯正装置(インビザライン※)による矯正費用とは別で費用がかかる可能性があります。アンカースクリューは適応になる症例が限られるため、一般的にはマウスピース型矯正装置(インビザライン※)による治療の費用には含まれていません。

アンカースクリューを使用して治療を行う場合、1本あたり30,000〜50,000円程度、追加で費用が発生します。

アンカースクリューを埋め込む流れ

歯の治療をする女性歯科医師

アンカースクリューはドライバーで歯槽骨に埋入します。局所麻酔を使用するため、処置の際の痛みはほとんどありません。アンカースクリューを埋め込む流れを詳しくみていきましょう。

1.アンカースクリューを埋め込む部分・方向の検討

レントゲンやCT撮影、歯科医師による診察によってアンカースクリューを埋め込む部分・方向を検討します。

2. アンカースクリューの埋入

消毒して局所麻酔を行い、アンカースクリューをドライバーで埋め込みます。歯茎の切開は必要ありません。ドライバーで埋め込む際に抵抗が強く、破折する可能性がある場合は、ドリルで誘導孔を形成することがあります。

埋入にかかる時間は、1本あたり5~10分程度です。

3. 処置終了

アンカースクリューがしっかりと埋め込まれたことを確認して処置は終了です。埋め込んだアンカースクリューはすぐに使用する場合もありますが、通常は2週間~1か月程度様子をみてから使用します。

4. 痛み止めと抗生物質の処方

痛み止めと抗生物質の処方を行い、ゴムかけの方法や感染予防の指導を行います。

アンカースクリューは必要がなくなれば除去します。歯茎に麻酔を塗布して抜きますが、痛みは軽いことがほとんどです。歯茎の傷は2~3日で目立たなくなり、歯茎の骨も1か月程度で修復されます。

まとめ

マウスピースを持っている女性

今回は、マウスピース型矯正装置(インビザライン※)のアンカースクリューの役割やメリット・デメリット、埋め込む流れについて解説しました。

アンカースクリューを歯槽骨に埋め込み、固定源を作ることで、歯を効率的に移動させることが可能です。矯正装置のみを使用した治療では難しいとされていた症例でも治療可能となり、治療がスムーズに進むというメリットがあります。

また、ヘッドギアのような大がかりな装置が不要で、抜歯をせずに矯正ができる可能性もあります。アンカースクリューを歯槽骨に埋め込む処置は、局所麻酔を使用するため痛みはほとんどなく、短時間で終了します。出血や術後の腫れもほとんどないため、体への負担は非常に少ないです。

ただし、アンカースクリューには脱落や細菌感染などのリスク、別途費用がかかるなどのデメリットがあります。歯科医師のアドバイスを受けながら、メリット・デメリットを十分に理解したうえで治療を選択しましょう。

マウスピース型矯正装置(インビザライン※)による治療を検討されている方は、神戸市垂水区にある歯医者「ふじよし矯正歯科クリニック」にお気軽にご相談ください。

※完成物薬機法対象外の矯正歯科装置であり、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる場合があります。