コラム

2023.10.25

歯列矯正は保険適応用になるのか

歯列矯正治療が保険適用になる場合とは

歯列矯正治療は、ほとんどの場合が保険適用外になります。
しかし、3症例の場合に限り保険診療の対象となるのでご紹介いたします。

  1. ① 【別に厚生労働大臣が定める疾患】に起因した咬合異常に対する歯列矯正治療。
  2. ② 前歯及び小臼歯の永久歯(大人の歯)のうち3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常に対する歯列矯正治療。(※埋伏歯開窓術を必要とするものに限る。)
  3. ③ 顎変形症の手術前・後の歯列矯正治療。(※顎離断等の手術を必要とするものに限る)

上記の保険診療の対象になる歯列矯正治療を行える医療機関は、
厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出た保険医療機関のみになります。
引用:公益社団法人日本矯正歯科学会(https://www.jos.gr.jp/facility

【別に厚生労働大臣が定める疾患】の種類

  1. 1.唇顎口蓋裂
    2.ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む。)
    3.鎖骨頭蓋骨異形成
    4.トリーチャ・コリンズ症候群
    5.ピエール・ロバン症候群
    6.ダウン症候群
    7.ラッセル・シルバー症候群
    8.ターナー症候群
    9.ベックウィズ・ウイーデマン症候群
    10.顔面半側萎縮症
    11.先天性ミオパチー
    12.筋ジストロフィー
    13.脊髄性筋萎縮症
    14.顔面半側肥大症
    15.エリス・ヴァンクレベルド症候群
    16.軟骨形成不全症
    17.外胚葉異形成症
    18.神経線維腫症
    19.基底細胞母斑症候群
    20.ヌーナン症候群
    21.マルファン症候群
    22.プラダー・ウィリー症候群
    23.顔面裂(横顔裂・斜顔裂及び正中顔裂を含む。)
    24.大理石骨病
    25.色素失調症
    26.口腔・顔面・指趾症候群
    27.メビウス症候群
    28.歌舞伎症候群
    29.クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群
    30.ウイリアムズ症候群
    31.ビンダー症候群
    32.スティックラー症候群
    33.小舌症
    34.頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群及び尖頭合指症を含む。)
    35.骨形成不全症
    36.フリーマン・シェルドン症候群
    37.ルビンスタイン・ティビ症候群
    38.染色体欠失症候群
    39.ラーセン症候群
    40.濃化異骨症
    41.6歯以上の先天性部分無歯症
    42.CHARGE症候群
    43.マーシャル症候群
    44.成長ホルモン分泌不全性低身長症
    45.ポリエックス症候群(XXX症候群、XXXX症候群及びXXXXX症候群を含む。)
    46.リング18症候群
    47.リンパ管腫
    48.全前脳胞症
    49.クラインフェルター症候群
    50.偽性低アルドステロン症
    51.ソトス症候群
    52.グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)
    53.線維性骨異形成症
    54.スタージ・ウェーバ症候群
    55.ケルビズム
    56.偽性副甲状腺機能低下症
    57.Ekman-Westborg-Julin症候群
    58.常染色体重複症候群
    59.巨大静脈奇形(頸部口腔咽頭びまん性病変)
    60.毛 ・鼻・指節症候群(Tricho Rhino Phalangeal症候群)
    61.その他顎・口腔の先天異常
    引用:公益社団法人日本矯正歯科学会(https://www.jos.gr.jp/facility

ほとんどの歯列矯正治療は保険適用外

● 基本的に歯列矯正治療は、保険適用にはならない!

歯列矯正治療が保険適用になる場合は、非常に限られています。
先天性の疾患による噛み合わせの異常などで歯列矯正を行う場合以外は、
基本的に保険適用にはなりません。
なぜ歯列矯正治療が保険適用外になるのかというと、
矯正治療は、日々更新・改善されていく技術や材料などが多く、承認をされるのを待っていては新しい高度な技術や材料を取り入れることができないため自由診療として提供されています。
これらの事は、歯列矯正治療に限ったことではありません。
一般歯科でも同様に、最新の材料や薬が開発された時には保険適用外の治療として取り入れられています。

●民間保険も適用外になる!

歯列矯正治療は、民間保険(医療保険や生命保険)も保証されません。
なぜかというと、病気に対する治療ではないと位置付けされているためです。

歯列矯正治療で保険適用になる場合の症例

●顎変形症

上下の顎骨の大きさや顎骨の異常や噛み合わせの異常、
顔の変形などの症状があります。
歯列矯正治療だけでは治療が出来ず、顎骨の手術が必要とする場合に保険が適用となります。

●唇顎口蓋裂による歯ならびの異常

先天性の病気の一つです。
歯を支えている骨(歯槽骨)と口唇、上顎の天井の部分(口蓋)が
裂けている症状があります。
口唇裂・口蓋裂・顎裂は合併することが多いため、
複数の手術が必要となるので保険が適用となります。

●筋ジストロフィーによる歯ならびの異常

骨格筋の壊死・再生を主病変とする遺伝性筋疾患の総称です。
筋ジストロフィーの中には多数の疾患が含まれますが、いずれも筋肉の機能となる遺伝子に変異が生じて起こる病気です。
お口の中には、巨舌や舌萎縮・高口蓋・開咬・歯列不正などの症状が現れやすくなります。

●ダウン症候群による歯ならびの異常

染色体の突然変異が原因で、ダウン症の子どもには筋肉が弱い・発育のスピードがゆっくりなどの特徴があり、合併症を生じることが多いです。
歯の先天的欠如(生まれつき歯の数が少ない)・歯の形の異常・口唇乾燥・受け口(交叉咬合)などお口の中にも症状が現れやすいです。

保険以外で矯正費を抑える方法

①医療費控除を利用する

医療費控除とは、毎年1月1日から12月31日までの1年間を対象期間として、支払った医療費の合計額が10万円(総所得金額が200万円未満の場合は総所得金額の5%)を超えた場合に受けることが出来る所得控除制度の一つになります。
翌年2月16日から3月15日までに確定申告をするか、対象となる年の翌年1月1日から5年間の間に還付申告することで税金が安くなります。

  • ・歯列矯正治療で医療費控除が対象となる例
    ・発育段階の子どもの歯列矯正治療
    ・機能に問題がある場合の歯列矯正治療
    ・通院及び子どもに付き添いが必要な場合の交通機関の交通費(自家用車は含まない)
    ・デンタルローンやクレジットによる支払い

などになります。

②高額療養費制度を利用する

1ヶ月間に支払った医療費の自己負担額が一定の金額(自己負担限度額)を超える医療費を支払った場合、申請を行うことで、超えた分を払い戻される制度になります。
申請の方法などは、加入している医療保険によって異なります。

③デンタルローンを利用する

治療費自体を抑えるのではなく、1回の支払額を抑える方法です。
デンタルローンを利用するには安定した収入が必要になります。
歯科医院が申し込み窓口となっている場合が多く、住宅ローン等と同様に審査があり、審査を通過した場合に利用することができます。

指定医療機関でのみ保険適用の歯列矯正治療を受けることができる

健康保険が適用となる歯列矯正治療は、厚生労働省から認定を受けた『指定自立支援医療機関』 『顎口腔機能診断施設』 と呼ばれる医療機関でのみ治療を受けることが出来ます。
施設の設備や人材のレベル等、厚生労働省が定めた様々な基準を満たしている医院のみに認定され、限られた医療機関のことを指します。
保険が適用となる歯列矯正治療の装置は、ブラケット装置のみの対応となり、マウスピース矯正は保険適用にならないことがあります。

まとめ

歯列矯正治療が保険適用となる場合は、一部の先天的な疾患や外科手術が必要な顎変形症など非常に限られた症例のみになります。
保険適用外でも、医療費控除や高額療養費制度・デンタルローンなどは利用することが可能なのでぜひ検討してみてください。